2008年06月 知る

2008年06月 知る

 物事を考える上で「知る」というキーワードがとても重要だと考えています。この「知る」に関連して二つの有名な言葉が思い出されます。ひとつは「足るを知る」という老子の言葉です。欲を捨てて現状に満足する者は精神的に豊かでいられるが、足りることを知らない人は、いくらお金があって豊かでも心が貧しいという意味です。もうひとつは「無知の知」というギリシャの哲学者、ソクラテスの有名な言葉です。知らないことを知っていると考えるより、知らないということを知っているほうが優れているということです。
 日本経済はこの先停滞あるいは後退基調になることが懸念され、会社の経営も皆さんの生活も今までに比べて楽ではない状態になるかもしれません。こんなときこそ「足るを知る」ということを皆で考えてみる必要があると思います。人間ですから欲が出るのは当然ですが、私たちの今の生活や会社の基盤を考え、それぞれの気持ちをバランスよくコントロールすることが必要だと考えています。
 その上でより良くするために、「無知の知」という考えで、私自身も未知なることに挑戦し、新しい境地を切り開いていくつもりです。皆さんも知らないことを知っていると思ってしまえば、そこで成長が止まってしまいます。自分自身がどこまで手が届いていて、どこまで手が伸ばせそうかを考えて、自分の置かれている立場や自身の生活や仕事をどのように充実させていくかを考えていただきたいと思います。個々人が少しずつ良くなることで、会社も良くなっていくと考えています。
 先日、秋葉原で通行人を無差別に殺傷する悲惨な事件が起きました。容疑者は短大を卒業してからいろいろな職を転々としていて、最後に勤めていた自動車関連の工場も派遣社員という身分でした。大きな会社になればなるほど効率を重視した経営が行われ、社員との関係もシビアになっています。そのために社員に占める派遣契約の社員の比率が高まっていて、不安定な身分で将来が保証されない派遣社員がさまざまな社会問題を引き起こしています。利益を上げるひとつの方法ではありますが、私自身は会社の姿勢として本当に正しいのかどうか疑問に思っています。社会状況を様々な側面から「知る」ということがバランスの良い経営に結びつきます。会社で働いていただく人には長く安心して勤めていただきたいと思いますし、そういう気持ちで仕事をしていただくことで、お客様にもよりよいサービスを提供できると考えています。
 私がこの4年間経営に携わり、富士情報の経営に対する確固たる考え方があったからこそ35年続けてこられたことを学びました。皆さんにもそういう会社の姿勢を「知って」、これからも協力していただきたいと思います。