陸上競技の100メートル走で最も速く走る人を「人類最速の男」と言います。今年の北京オリンピックでジャマイカのウサイン・ボルトが9秒69の世界新記録で優勝し、時速にして37キロの壁をはじめて超えました。日本人では1998年に伊東浩司が10秒ジャストの日本記録を出していて、彼らの速さには驚きます。しかし、中学生の頃に周りにいる足の早い人は12秒台で走っていましたので、人類最速と言われる人と私たちの周りにいる人とは100メートルで2、3秒の違いしかないわけです。足の速さだけではなく、ほかの肉体的な能力でも人はそれほど変わらないように思います。
違いがあるのは身体的なものよりむしろ頭の中だと思います。芸術家や発明家の能力は計り知れないものがあります。我々でも頭で感じたり、考えたり、想像する力は肉体的な能力に比べると無限の可能性があり、一人ひとりの心がけや意識の持ち方によって大きく違ってくると思っています。肉体的な能力や外見は見た目でもわかるので、日常的に気遣っている人が多いと思いますが、頭の中は目に見えません。外から見えないからこそ特に意識をして長い人生の中で常に鍛えていかなければならないものだと思います。
頭も体と同様に栄養を与えていく必要があり、それが原動力になって鍛えられると考えています。栄養を与えてどのように育てるかは皆さんの考え方しだいですが、まず栄養を与えないことには頭の中でいろいろなものを感じたり、考えたりすることができません。
今は紅葉が美しく、食べ物もおいしく、芸術の秋と言われているように音楽を聴いたり、映画を見たり、本を読んだり、頭に栄養を与えるとても良い季節です。我々の感性も非常に敏感になっていて栄養補給に適している時期だと思います。特に自然からの刺激や直感に訴えかけるものが多いこの時期にいかに心豊かにするかを一人ひとりが考えていただきたいと思います。