人間が危機に遭遇したとき、走馬灯のように過去の事柄が頭をよぎることがあるそうです。危機になったときに自分たちの知識や過去の経験によって、その場を乗り越えることができるように本能的に判断して対応しているのです。すこし前の話になりますが、USエアウェーズの旅客機がハドソン川に不時着水して乗客全員の命を救うことができたのは、機長の単なる“おもいつき”ではなくて、軍隊などで経験したさまざまな事柄に基づいたとっさの判断だったと思います。
経済環境がますます厳しくなる中で、当社も少しずつ影響が出始めています。この数年直面している課題が徐々にボディーブローのように効いてきていると言えます。しかし、私自身はあまり悲観的には考えていません。それは当社に対するお客様の信頼や期待を近ごろひしひしと感じているからです。それもこれまでとは違い、パートナーとしての期待が大いに増しています。これは長年の実績の積み重ねによるものですが、お客様の側もめまぐるしく変化する環境の中で、自分たちだけでは対応できなくなってきているという実情もあります。私たちのような会社をパートナーとして選び、アドバイズやさまざまな力を必要としているということです。従来の下請、外注、という形態は1対多数の関係で、1社が5社や10社とお付き合いをします。一方、パートナーという場合には1対1、せいぜい1対2ぐらいになります。したがって1社のお客様に対して、選ばれた1社か2社しかパートナーにはなれないということになります。パートナーとして選ばれるためには量の面でも質の面でもナンバーワンでなければなりません。質も品質だけでなくお客様に有用な提案や新しいアイディアなど、お客様が期待している以上のサービスが求められています。
いま世の中がめまぐるしく動いていますが、その動きに対して適切に対応することが大切です。これまで当社がさまざまな問題に対応できてきたのは、単純に仕事を積み重ねてきただけではなくて、対応できる力をつけてきているからです。そうした力をこれからも維持し、さらに積み重ねていきたいと思っています。この危機は大きな力を身につける絶好のチャンスだと思います。皆で力を合わせて前向きに積極的に乗り切り、未来を創っていきましょう。