日本人の死因の第一位は“ガン”ですが、全世界では“飢え”が一番となります。貧しくて死んでいる人がもっとも多いのです。WFPによると世界の6分の1に相当する10億人近い人が飢餓に苦しんでいます。『もし世界が100人の村だったら』という話は有名です。たとえば100人のうち、80人は標準以下の居住環境に住み、70人は文字が読めません、50人は栄養失調に苦しんでいます。こういう観点から見れば日本は非常に恵まれています。世界の貧困に触れる機会はありませんが、私たちの生活の影には貧しい国が少なからず関わっています。100円ショップの製品、ユニクロ等の衣料品、食料品、電化製品かなりの品物が中国をはじめとする新興国、後進国に依存しています。我々の仕事である、入力業務やシステム開発業務も中国へのオフショア化が進行しており、決して無関係ではありません。同じ人間が同じような仕事をしているので同じ品質であれば、水が高いところから低いところに流れていくように、どんどん仕事が彼ら(中国)の方に流れていきます。
繊維、半導体などは日本がリードしていた時期もありましたが、今は製造装置さえあれば比較的簡単に高品質なものを生産可能となり主役が他の国と変わってしまっています。私たちが私たちの手でこういう全体が貧しい世界の中で生き残っていくためには品質の高い仕事をしていかなければ、世界の波にのまれて沈んでしまいます。輸出品に直接携わる人たちだけ頑張ればよいかというと、違います。私たちの仕事のひとつひとつは密接に関係して社会の基盤を支えており、我々の文化を作っています。その集大成が輸出品であり、私たちの仕事が世界から評価されているといえます。私自身もアメリカに赴任していたことがあり、多くの国の人々と仕事をしてきました。こういう経験から言えることは、日本人は一言で言えば高品質な製品を作ることに関して非常に優秀です。器用さ、まじめさに関しては桁違いに優れています。みなさんがレベルの高い仕事を行い、生活することで皆さんを取り巻く社会が変わってきます。
『もし世界が100人の村だったら』について付け加えますと、銀行に預金があって、財布にお金があって、家のどこかに小銭の入った入れ物があるならば、世界の中でもっとも裕福な上位8パーセントのうちの一人になります。サブプライムの関係で大きな波を受け、私たちの生活も大きく影響を受けています。ただし、私たちはまだ恵まれています。とりまく環境をよく認識し、この環境を守って発展させるためによい仕事をしていきたいと考えています。