2009年10月 赤い色

2009年10月 赤い色

 紅葉の秋を迎え、木々が色づき始めました。中でも燃えるような真っ赤な紅葉は特に目に鮮やかで刺激的です。この赤い色についてちょっと考えてみました。
 前に勤めていた会社の工場実習でテレビのブラウン管の製造ラインで働いたことがありました。ブラウン管はディスプレイのガラスに青、緑、赤の3色の蛍光体を塗布し、真空状態にして裏側から電子ビームでこれを光らせて画像を作っています。3色しかないのになぜ私たちの目に見えるのと同じようなものが実現できるのか不思議です。緑と赤を足すと黄色になり、割合を変えてオレンジに見えるなど原理は簡単です。二色の光を足しただけで実際に見るのと同じ色になることが不思議です。人間の目の網膜には色を認識する錐体という650万くらいの細胞があり、それが色を解析しています。これらは青が1、緑が3、赤が6という割合で存在し、それぞれのセンサーが色を検知し、これらの3原色だけでなく各センサーの反応度合いで中間の色も感知しています。
 人間以外の動物では、爬虫類や虫や魚や鳥などは4色見えるそうですが、犬などの哺乳類の大部分は2色しか見えません。恐竜が世の中を席捲しているときに、大部分の哺乳類は夜行性になり、夜動くことによって色を失ったそうです。人間の祖先である猿が木の上で生活するようになり、昼間活動し木の間に隠れている熟した木の実を見分けてきました。このような生活をすることで青と緑しか見えなかった目のセンサーの、緑のセンサーが若干赤側にずれるという進化がありました。この結果赤を検知できる種が生まれ、その子孫である私たちは赤を認識することができるわけです。赤は三大欲のひとつの食欲がいちばん刺激されるようです。このようなことを意識しながら、柿、林檎などの木を見ると、熟した実が強烈に目に飛び込んできます。
 テレビや写真などによって家にいながらにしていろいろなところに行ったかのように景色などを見ることができますが、私たちがテレビや写真から得られる情報は、自然から直接与えてもらう刺激のごく一部でしかありません。したがって実際のものに直接触れたり見たりすることでいちばんよい刺激を受けることができ、その刺激によって私たちはより活性化されるのです。
 いまの世の中は景気が悪く、元気がなく、赤といえば赤字という良くないイメージもありますが、逆に情熱の赤、元気の出る赤と考えて、元気を出していただきたいと思います。