2013年07月 安心と信頼

2013年07月 安心と信頼

 社会心理学者の山岸俊男氏によると――「相手が自分を搾取しようとする意図をもっていないという期待」のうち、相手が自分を搾取しようとすることが相手自身にとっての不利益になるからそうしないだろうという期待、すなわち「相手の自己利益の評価」にもとづく期待を「安心」、「相手の人格や相手が自分に対してもつ感情についての評価」にもとづく期待を「信頼」として、安心と信頼を区別する――とあります。
 「安心」は集団主義における信頼ともいえます。集団内における「内びいき」により不信を抑え、集団の維持コストを抑えています。例えば会社での終身雇用、年功序列などが具体的な例として挙げられます。一度集団に入り、信頼の関係づくりが出来てしまえばその後は悪意を持たない限り関係を続けることが容易でした。
 「信頼」の場合は人格に基づく自発的な関係であるのに対し、「安心」の場合は集団における相互監視に対する消極的な関係となります。つまり、「旅の恥はかき捨て」というように、監視の無い集団の外でのモラルの低下が欠点です。
 「安心」は変化が少ない場合にメリットがあります。しかし、今のように変化が激しい場合、変化に応じて多くの機会を評価し、新たな「信頼」のネットワークを築き変化・進化する必要があります。相手に対する「信頼」の評価の能力も必要ですが、「信頼」を得るためには自分の人格を常に鍛え、仕事のレベルアップをはかる必要があります。
 会社の組織運営には従来からの「安心」がベースにあります。これに加え、お客様、社員との仕事でのつながりを、「安心」を上回る「信頼」で築いていくように進化する必要があると考えています。