プリンストン大学の心理学者(ジョン・ダーリー、ダニエル・バッソン)が「善きサマリア人」という聖書に出てくる話にヒントを得て、「背景の力」がどれだけ重要かを示す実験を行ったそうです。「善きサマリア人」の話とは、追いはぎに会い路上に打ち捨てられた人がいました。そこを司祭など敬虔で人徳があると言われている人々は見過ごしていましたが、軽蔑されている少数民族のサマリア人が傷の手当てをして宿場まで連れて行ったというエピソードです。
この心理学者達は志や倫理観が高いプリンストン神学校の学生を用い、日頃の倫理観が行動にどのように影響するかを実験しました。実験では近くのビルで談話してもらうよう依頼し、移動の途中で行き倒れの人に対する彼らの行動を観察しました。様々な条件を変えて実験を行いました。そのなかで一番影響が大きかったのは、本人の倫理観よりも送り出す際の指示でした。「アッ遅刻だ、急いだ方がいい」と言って送り出した時には10%が立ち止り、「時間に余裕があるけれどそろそろ行った方がいいだろう」と送り出した場合には63%もの人が立ち止ったそうです。日頃の心がけ以上に「背景の力」が非常に重要であるという結果となりました。
我々も日頃の生活、仕事においてやりたい事、やらなければならない事が年を重ねるたびに増えています。そして、なぜかわからないけど、時間が足りず、慌ただしい毎日を過ごすようになってしまっているのではないでしょうか?しかし、詰め込みすぎてしまっては新しいことにチャレンジする余裕もできません。日頃心掛けていることを生かすチャンスが来ても「善きサマリア人」のように自分が本来持っている倫理観も生きてきません。日々の生活の中に余裕を作る必要があります。
余裕を作るためには今時間をかけていることの効率を上げるか、優先順位をつけて取捨選択していくしかありません。時間は皆に平等です。限られた時間の中でいかに有効に過ごすかは自分に対する責任でもあります。
3月は卒業シーズンです。学生の頃は卒業するたびに、自分のやるべきことを見直し取捨選択する機会がありました。この機会に見直しをしてみてはいかがですか?