10月1日に新幹線が開業50周年を迎えました。これまで延べ約56億人が乗車し、走行した総距離は地球5万周に相当する約20億キロに達するとのことです。新幹線の列車当たりの年間平均遅延時間は0.5分と非常に正確な運行をしています。また開業以来死亡事故が0件と他の輸送機関に比較できないほど安全です。新幹線の代わりに自動車で同量の輸送を代替した場合と比べると400名の死亡事故を減らせるとの試算もあります。
イギリス環境運輸地域省の調査によると輸送量(キロ・人)あたりの死亡事故は飛行機が一番少なく、バス、電車、貨物トラック、船、自家用車と続きます。また、移動回数あたりとなると、バス、電車、貨物トラック、自家用車、船、飛行機となるとのことです。いずれにしても、新幹線の圧倒的な安全性は明らかです。
他国の高速鉄道をみますと、1998年にはドイツの車輪の欠陥による脱線事故で101名の死亡事故、2011年には中国で信号故障、その後の運行管理のミスによる追突事故で死者が40名。2013年にはスペインの速度超過による転覆脱線事故で79名が死亡しました。
新幹線では設計段階で安全を得るために事故を発生させるような要素を徹底的に排除しました。例えば自動車、歩行者との事故を避けるため踏切は設けず、立体交差とし、プラットフォームから人が線路に入らないように稼働式の安全柵つきのゲートを設けています。
しかしまったく事故が無かったわけではありません。阪神淡路大震災の際には高架が倒れましたが、運行直前の早朝だったため被害はありませんでした。新潟中越地震では時速200km/hで走行していた車両が1.7㎞走って止まり8両が脱線しました。これらの震災を教訓とし、高架の補強、逸脱防止機構の導入などを行い、東日本大震災では激震を受けた区間では10本もの新幹線が運行していましたが、脱線もせずに無事でした。ただ、一本の試運転車両が低速で脱線したのみでした。
このように新幹線は安全を最優先とした設計思想で作られ、50年の間常に安全の向上に対するたゆまぬ努力が50年間死亡事故ゼロという結果に結びついたのだと思います。設計段階から障害の要因を可能な限り排除する。それでも残る要素に対しては運用面、あるいは新たな技術の導入を図り常に安全最優先の改善を続けてきたという結果なのだと思います。
我々の仕事においても不確実な要素が非常に多いですが、確実に抑えられるところを抑え、不確実な要素を出来る限り少なくし、不確実な部分に対して最大限注力するような継続的な努力が有効なのだと思います。