2014年11月 ビッグデータ

2014年11月 ビッグデータ

 先日NHKでビッグデータの医療分野での活用の特集を放送していました。未熟児にとって感染症は致命的で、なるべく早い対応が求められます。未熟児の感染症と様々なデータの相関を調べ、酸素濃度と心拍が変化したのちに感染症の発症がみられることが分かり、臨床試験を始めるとのことです。ぜんそく患者に対しては、吸入器にgpsセンサーを取り付け、吸入した日時、場所を記録するようにしました。これらのデータを解析することで原因物質の特定が行われ、これらの物質を避けることで発作の頻度を半分以下に抑えることができたそうです。ガンの入院患者に関しては「体温」「心拍数」「トイレの回数」など300を超えるデータを延べ16万人分蓄積し、解析しました。入院期間の長さには様々な要素が関係していますが、特に「痛み」がリハビリに影響を与えることが分かり、痛みの度合いを細かく数値化しました。痛みの度合いに応じリハビリを早期に開始することで、以前は2週間以上かかっていた入院期間を1週間以下に短縮することができたとのことです。
 このように、多くの数値を蓄積し、解析することでこれまでに分からなかったことが明確になり、新たな知見が得られます。ここで紹介した医療分野以外でもこれまで、インターネットのショッピングの購入履歴、閲覧履歴などをはじめ、交通インフラ、農業など様々な分野でビッグデータが活用されており、我々の生活をより豊かにしてくれるはずです。
 ビッグデータが可能になった背景は、ネットワーク、センサ技術の向上、記録媒体の低コスト化計算能力の向上などがあり、現在ではペタバイト(10^15Byte、1000TeraByte)規模のデータを処理しているそうです。
 ビッグデータは非常に有用ですし、ともすると我々の経験、ノウハウなどが不要になってしまう危惧を感じるかもしれません。まずは特徴を良く理解する必要があります。まずは、当然ですが、過去のデータに制約されます。つまり、再現性のある現象には有効です。逆にバブル崩壊など過去のデータから推測できない希少な事象には適用が難しくなります。取得できるデータも限界があります。センサー技術が向上し多くのデータが取得できますが、人の感情などセンサー等ではデータ化できない情報もまだたくさんあります。そして、得られる結果が有用であってもあくまでも相関性であり、因果関係が明らかになるわけではないという点も注意が必要です。
 ビッグデータの技術はこれらの特徴を踏まえたうえで有効な知見を生み出し、我々の生活を豊かに変えてくれます。このように数値化できるようなノウハウ、技術に関してはビッグデータに任せた方が良いかもしれません。ビッグデータが苦手な数値化できないような領域、未来に対する創造(職人的な修練、理念を具現化するリーダーシップなど、良心、美意識、善悪など感性が重要な領域)が我々の価値を追求できる領域なのだと思います