入社おめでとうございます。富士情報を代表して皆さんを歓迎するとともに、心からお祝い申し上げます。当社の社訓は「正確、信頼」です。創業のデータ入力業務を始めシステム開発、BPOの分野で信頼を重ね、「究極の情報サービス」の実現へ努力してきました。「究極の情報サービス」の実現にはより深い知見と感性が必要であり、お客様と長くおつきあいし深く理解することでお客様すら認識できなかったような価値を創造して行くことが求められています。つまり、当社においては一人ひとりの価値の積み重ねが企業の価値となります。福澤諭吉が「学問のススメ」で「個人の独立があって国も独立する」と言っている通り、企業においても一人ひとりの独立、つまり自分の立場を理解し、常に自分なりの成長を続けることが非常に重要だと考えています。これまでの学生生活では履修すべきカリキュラムが決められ、一定の水準をクリアすることで単位を取得できました。いわば受け身の態度が主体でした。仕事においては決められた水準をクリアすることは最低限、プラスアルファつまり能動的な態度による付加価値が評価につながります。習得には何段階もあり、学校で学んだときの「分かった」、テストで点を取ったときの「できた」「覚えている」まではこれまで十分経験していると思います。仕事においては「できた」をさらに究め、価値を高める必要があります。一言で「できた」といっても、安定的に一定の水準を維持できなければ意味がありません。「できた」の上は「習得(マスター)する」「熟練」そして「超一流」[究める」などより高いレベルがることを是非意識してください。
付加価値を創造するためには、与えられた課題をこなすだけではなく、自らが感じ、考え行動することつまり独立が求められます。しかし、カントが「ほとんどの人間は自然においてはすでに成年に達していて(自然による成年)、他人の指導を求める年齢ではなくなっているというのに、死ぬまで他人の指示を仰ぎたいと思っているのである」といっているとおり、独立は古来からの課題のようです。カントは「その原因は人間の怠慢と臆病にある。というのも、未成年の状態にとどまっているのは、なんとも楽なことだからだ」と断じています。そして「人間はみずからの責任において、未成年の状態にとどまっていることになる」と述べ、一人ひとりの責任に帰結しています。これから長い社会人生活、未成年のままにとどまりつづけるのではなく勇気を出して一歩一歩成長してもらいたいと考えています。先ほど申し上げました通り当社は情報サービス業を生業としています。情報は処理・編集することで「知」として価値を持ちます。知るに関して「探索行動(たんさくこうどう=知る)とは、動物に見られる周囲の状況を探索する行動のことである」と言われておりアリストテレは「知」について、「すべて人間は、知ることを楽しむことを求めることが本性なり。彼らが見聞を好むのは、その象徴なり。実際の役に立たなくとも、見聞はただ見聞として愛好されるからなり。すべて人間は生まれながらにして知ることを欲する」と言っており、我々にとっては非常に身近な概念です。ただし、我々にとっての「知」はお客様、社会にとって価値のある「知」なければならず、ただ「知」を得るだけでは、「論語読みの論語知らず」となってしまいます。「知」は活用して初めて価値を持ちます。特に昨今の情報インフラ拡充により情報を集めるだけなら容易です。いかに価値のある状態へ変えていくかが重要になります。これから、職場にて「究極の情報サービス」を担うべく、一人ひとりの立場で成長を期待しています。成長の時間の目安として1万時間の法則があります。これは特定の芸術、スポーツ、技術などの分野で超一流になるまでに1万時間必要であるということを意味しています。一日8時間を週5日、約52週だと一年で2000時間弱。1万時間には5年ほどかかる計算になります。成長するためには時間だけではなく、密度も重要ですので、取り組む意識や内容、方法などによっては5年では済まず、10年、20年かかるかもしれません。長い時間をかけて一人ひとりの課題を少しずつクリアし続けた先の成長を期待しています。身近な例でいえば、母国語以外の語学を習得するために必要な時間が2200時間と言われています。中高大の英語の時間は1000時間弱なので、これらの倍の時間が必要です。そして、学習方法や習得のための前向きな意識が非常に重要だそうです。上記のように貴重な時間を仕事に費やし、成長するためには態度が重要です。「謙虚さ」「貪欲さ」「前向き」な態度が重要だと考えています。老子の言葉に「足るを知る者は富む」があります。人の欲は無限であり、あれもこれも欲していては欲に振り回されてしまい、結局は何も得られなくなってしまいます。自分の身の丈に合った状態をいかに受け入れられるかが重要です。自分の状態を受け入れれば、そこから貪欲に取り組むだけです。ソクラテスは知的貪欲さに関して「無知の知」と言っています。知っていること、知らないことは自分が思っているほど分かっていないものです。分かっているつもり、できているつもりと思っても、実は未熟だったということが往々にしてあります、常に貪欲に取り組み見直し極めてください。我々を取り巻く環境は必ずしも整っている訳ではありません。むしろ不十分な状態で答え、結果を出し続けなければなりません。非常に厳しい場面もあると思います。「疾風に勁草を知る」という言葉にあるように厳しいときこそ本質が問われます。常に前向きに逃げずに取り組んでください。