素朴な質問が本質を突いていると実感することがよくあります。新入社員の面接のときに「聞きたいことありますか?」と問いかけるようにしています。先日の面接で同様の問いかけをしたところ「社員を褒めてあげたいのはどんな時ですか?」と尋ねられました。すぐ頭に浮かんだのは、「何かを成し遂げた」というありきたりの答えでした。少し間をおいて「本人にとっての目標、課題が見つかった時」と答えました。
成し遂げた、成し遂げられないという結果は事実ですが、評価が非常に難しく、本人がどの程度努力し、成長したのかも結果からは判断しにくいと考えています。仕事であればお客様や景気などの外的要因の割合が非常に高いのではないでしょうか?時々の結果は非常に重要ですが、目標を明確に定め、過程を振り返ることが成長、向上するためにより重要だと考えています。
成長するためにはいくつかの段階があります。一番最初はマニュアル通り、学校の授業のように皆同じ課題を与えられ、求められている結果を出す。そこから、品質、生産性、付加価値をいかに高められるかが重要です。そこで、皆頑張ります。他の人よりも時間をかける、集中、負荷を増やすなど様々です。その次に一般的によく知られている様々な方法、解決策を試します。この辺りまでが一般的に頑張っているという状態です。求められている以上の結果が出始めます。しかし、頑張っているけど結果が出ないことが多々ありますが、単に時間をかければ良いという訳ではありません。このあたりで環境や条件などが足りないなどと他責に要因を転嫁してしまうとこれ以上の成長がありません。
昨年、シンクロナイズド・スイミングの日本代表のコーチに井村さんが復帰し、テレビで指導の様子を放送していました。番組の中で選手が涙を流して悔しがっていました。井村コーチの指導は厳しくて有名ですが、指導が厳しくて涙していたのではありませんでした。その選手は「これまで代表選手として努力して、これ以上ないくらい頑張ってきた。けれど井村コーチから指導を受けて、無理だと思っていたがやればできてしまう、これまでの努力は何だったのか非常に悔しい。」と言っていました。
一人ひとり生まれながらに持っている可能性や、それまでの経験値、実力は異なりますし、期待されている内容、結果も異なります。仕事であれば組織としての理念、中長期的、そして短期的な目標があります。自分の今の状態(立ち位置)を見つめなおし自分は何がすぐれ、何が足りなくて、何を目指すべきか。そのためには具体的にはどこを伸ばし、欠点を克服すべきかなど百人百通りの目標と、課題が出てきます。自分の目標、課題を見つけて成長している状態になって初めて、環境や指導者の必要性が出てくるのだと思います。自分にとっての課題は何かを見つめなおしては如何でしょうか