2015年09月 理念の実現

2015年09月 理念の実現

 オリンピックのロゴの使用が中止されました。当初ベルギーのリエージュ劇場のロゴに類似していると指摘されました。その後、佐野研二郎氏のプレゼンテーションの素材、過去の仕事での流用など様々な問題が取り上げられ、結果として使用の中止を判断したようです。佐野氏側に問題があったことも明らかですが、選考に係わった人たちの責任も大きいと思います。ロゴの選考委員の中には佐野氏の元同僚もいたそうなので、はたから見れば身内贔屓の選考と受け取れてしまいます。オリンピック招致のロゴの場合は女子美術大の学生の作品を採択し、国内の著名なデザイナーの手を経て完成しました。5色の桜をリースにあしらったロゴで、リースには「再び戻る」という意味があり、「スポーツを通じてこの国に再び勇気と活気を取り戻したい」という想いが込められているそうです。また、オリンピックカラーの黒の代わりに紫をあしらえ、東京の雅を同時に表現しています。このように招致のロゴに関しては関わった人々の想いが伝わってくるのに対し、撤回されたロゴからは(流用、盗用を無視しても)デザイン的な洗練さは認められますが、想いを感じることはできませんでした。今回のオリンピックでは国立競技場の建設案も白紙撤回となり、楽しみにしていただけに非常に残念です。国立競技場に関しても選考の際の不明瞭な経緯、係わった方々の無責任な言動が気になりました。ロゴも国立競技場も問題の本質は一緒だと思います。オリンピックは非常に大きな事業です。事業においては理念を周知し、予算の範囲での実現が最も重要です。また、事業は個別の事業に予算と権限を移譲し細分化され運営されます。その際に、個別の事業で「予算がついたから自分たちの好きにやってもいい」、「権限を委譲されたし国家事業だから素晴らしい箱を作ればお金はどうにかなる」などと考えていたら今回の様な問題が再び起きてしまいます。我々の仕事も同様です。自分の立場における権限と予算のバランス、そして理念をどう具体的に実現していくかを良く考え実行することが組織としての大きな力となります。いま陸上の桐生選手、サニブラウン選手、野球のオコエ選手など個性豊かで才能を持った若い選手が出てきました。5年後のオリンピックが大成功になるよう関心を持ち、期待をしていきたいと思います。