ニュース番組では、毎日多くの事件・事故が報道されています。身近な場所であったり、一時期に集中したりすると「最近物騒になったな注意しなければ」と漠然としたあまり根拠のない印象を持つことがあります。このような感覚は現実と異なることが往々にしてあります。一番深刻な事件である殺人事件においては2013年は342人の方が犠牲になっています。10万人に0.28人の割合です。これは世界の中でも最も低い水準です。他の国はというと10万人当たりの被害者は中国では0.82人、イギリスでは0.95人、アメリカでは3.82人となっており、日本がいかに安全かということが数字からよく理解できます。ちなみに深刻な国ではブラジルの26.5人、南アフリカの31.86人、ホンジュラスの84.29人など実に日本の100倍以上の率になっていて、その危険度は想像すらできません。
時系列でみると、1950年は1916人の方が犠牲となっており、10万人当たり2.2人という割合となっています。最近でも2000年は768人の方が犠牲となっており10万人当たり0.5人という割合です。長期的に見ても60年ちょっとで約八分の一、13年で約二分の一と減り続けており、治安はますます良くなっています。被害者と犯人(被疑者)の関係を見ると親族の割合が52.2%で、面識のある場合は87.8%とのことです。また犯人のうち4割から5割が以前に刑法犯又は道路交通法を除く特別法犯により検挙された経歴があるそうです。上記からわかるように、少し調べるだけで、普段身の回りの人間関係を注意するだけでかなり防げることが分かり、漠然とした不安感が誤りであると認識できます。
むしろ我々にとって身近で深刻な課題は健康面と経済面です。9月には医療費が40兆円を超えたと報道がありました。高齢化の進展や、医療技術の高度化が主な要因とのことです。医療費に年金、福祉などを合わせた社会福祉給付金は2014年の予算で115.2兆円で1990年の42.7兆円の2.7倍、2000年の78.1兆円に比べて実に1.5倍と急増しています。厚生労働省の推計では2025年には医療費が1.5倍となり社会保障給付金全体で30兆円超増えると推計しておりますます深刻になってきます。財政面でいえば2014年度予算では一般会計のうち30兆円を社会保障費として計上しています。これは歳出のうち国債費、地方交付金を除く一般歳出の実に54%という割合を占めており、歳入のほぼ半分を国債が占めている現状から考えるとこれ以上の負担増は非常に困難です。このような背景もあり医療費抑制の動きが非常に活発になってきており、最近も診療報酬の引き下げが議論されており医師会の反発があったと報道されていました。
医療費抑制には我々も対応していかなければなりません。日本人の死因は多い順に癌、心疾患、肺炎、脳血管疾患で6割を占めます。私の年代(45~49才、男性)でも癌が一番多く、この年代の430万人のうち年に2,133人の方が癌で亡くなっています。癌は、「あの家は癌家系だ」ということがあります。しかし部位によりますが遺伝性の癌は5~10%程度だそうです。癌のうち9割は生活習慣である程度予防可能と言えます。国立がんセンターが「日本人に推奨できる科学的根拠に基づく予防法」を公表しています。禁煙、適切な飲酒、野菜の摂取、塩分控えめ、適度な運動、適切な体重、熱いものを冷ます、肝炎ウィルスの検査、などです。心身ともにストレスをかけすぎず、ほどほどのストレスで健康を維持する。非常にあたりまえ過ぎてニュースのネタとしては面白みに欠けますが大事なことだと思います。
昔から、「人は見たいものしか見ない」「人は望んでいるものしか信じない」と言われています。インターネットの普及で沢山の情報に簡単にアクセスすることができます。情報を発信する側は意図をもって発信すると認識を持ち、魅力的なキャッチコピー、興味をそそる情報、断片的な情報に惑わされず、自分にとってためになる情報を意識して得ていくようにしなければならないと思います。