今年のトヨタの株主総会で豊田章男社長が『「超二流」を目指して努力を続けたい』と述べました。「超二流」とは1950年代に西鉄ライオンズを率い日本シリーズを三連覇した三原監督の代名詞です。決して一流ではないが守備や打撃など一芸に秀でた選手を多く起用し、彼らのことを「超二流」と表現していたそうです。代走、守備、代打(長打・打率)など、選手の秀でた一芸を評価し、とことん一芸を極めるように働きかけ、適材適所で起用したそうです。豊田社長は『がむしゃらに努力することで一流をしのぐ超二流になれるということに共感を覚えた。われわれは一流とは言えないかもしれないが、それぞれ一芸は持っているつもりなので、超二流を目指して努力を続けたい』と述べました。豊田といえば、販売台数、品質ともに世界のトップレベルであり一流といえます。そのトヨタが今の状況に満足せず「超二流」を目指すと宣言したことは競合他社にとっては脅威に映ると思います。一流、二流、三流とよく使いますが、これらはその時の結果を表すことが多く、何もしなければ同じ結果を出し続けることは困難です。一流はその結果に甘え傲慢な態度になりがちですし、二流は一流にかなわない理由を他責にし、言い訳を言い、三流はもはや諦めの境地に至ってしまいます。二流に超をつけることで、傲慢な態度にならず、常に謙虚に地道な努力を続けられるはずです。先日イチロー選手が日米通算4257安打の世界新記録を達成しました。そのインタビューで『僕は子どもの頃から人に笑われてきたことを常に達成してきているという自負はある。たとえば、小学生のころに毎日野球の練習をして、近所の人からあいつプロ野球選手にでもなるのかって、いつも笑われていた。悔しい思いもしましたけど、プロ野球選手にもなった。そして何年かやって、日本で首位打者をとって、今度アメリカに行くときに、首位打者になってみたい。そんなときもやっぱり笑われた。でもそれも2回達成した。常に人に笑われてきた歴史、悔しい歴史が僕の中にある。これからもそれをクリアしていきたいという思いはもちろんあります』と答えた内容が非常に印象でした。今となっては超一流選手といっても過言ではありませんが、これまで少年野球、プロ野球、大リーグ挑戦など多くの場面で周囲の評価は一流とはいえる状況ではなく、地道な努力を続け少ないチャンスをものにし結果を出し続けたことが、今のイチロー選手の実績となります。私たちも一人ひとり異なる能力があり、組織、集団の中での役割も異なっています。今の表面的な評価に縛られず自分の極めるべき能力を見極め、地道な努力を続けることは非常に重要です。そして、その成長の成果を大いに起用し高いレベルの結果を出せる組織を創っていきたいと考えています。