12月15日「統合型リゾート(IR)整備推進法」(カジノ法)が国会で可決されました。またギャンブル依存症対策を強化する法案を早ければ来年の通常国会で提出する検討に入ったとのことです。
カジノの賭けに関する研究があります。アメリカのベル研究所のジョン・ケリーという情報理論に携わる研究者は1956年に「情報理論とギャンブル」という論文を執筆しました。流石に天下のベル研ではこのタイトルで発表ができなかったようで「情報速度の新解釈」というタイトルで発表されました。このケリー方式は一言でいうと「信じる度合いを賭ける」という考え方です。勝つ確率が1%であれば持ち金の1%を賭けるというものです。より確率が高くなれば賭ける金額の割合も増えていきます。表が出る確率が55%のコインの賭けにケリー方式を適用すると、500回の勝負で元手の約74倍になるというシミュレーション結果もあります。ケリーはケリー方式を実際に使うことはなかったそうです。この研究には計算機の発展に大いに寄与し、情報理論の父と呼ばれるシャノンという研究者もかかわっていました。
シャノンはベル研を退任した後、MITの教授となりました。MITではエド・ソープという研究者がブラックジャックに関して研究をしていて1961年にアメリカの数学会で「幸運の公式-ブラックジャックの必勝方式」という発表を行い、反響を呼びました。ソープは実際にこの発表とケリー方式を使ってカジノで試したそうです。その結果30人時で1万ドルの元手が2万1000ドルになったそうです。そして、「週40時間」、「カジノからの介入なし」「テーブルの下限と上限の間で掛け金を上下させる」という理想的な条件で実施できた場合年間に30万ドルを稼ぎ出せると試算しました。その後「ディーラーに勝つ」というタイトル本を出版し、多くの人がこの方式を実践したのですが、その結果ブラックジャックのルールが変わってしまったそうです。
我々の身近には宝くじがあります。当たる確率は1000万分の1だそうで、交通事故で死ぬ確率がおおよそ2.5万分の1なので非常に低い確率だということが分かります。宝くじを続けて買えばいつかは当たる、当たる確率が高くなると思っています。実際に計算してみますと、1回で外れる確率は99.99999%です。100万回買い続けると当たらない確率は約90%、700万回続けても当たらない確率は49.7%で1000万回続けても36.8%が当たりません。1/2の確率で試算するとわかります。1回で外れる確率は50%です。2回続けて外れるのは1/2×1/2=25%になります。50%が1回当たり、25%が2回続けて当たります。このように毎回リセットされるくじの場合は外れ続ける確率が残ってしまいます。宝くじで当たりが欲しければ1000万枚を1回で買い占めれば確実です。しかし還元率は45.7%とのことですので、元手が半分以下になってしまいます。
我々の周りには確率や統計が現実を支配していてこれらの観点で見て考え判断することは非常に重要です。ケリーは「ギャンブルと投資の違いはマイナス符号だけ、有利な賭けが投資、不利な賭けがギャンブル」と言っています。宝くじもギャンブルの一つですが、娯楽として自由になるお金の一部でささやかな夢を買うのが一番だと思います。