2017年08月 新技術

2017年08月 新技術

 将棋の藤井聡太四段が14歳最後の都成四段との対局の解説が話題になっていました。この対局は130手で投了となったのですが100手くらいまでは都成四段が優勢で110手あたりから潮目が変わり、解説が変化しました。「うわ落ち着いちゃったよ」「お茶飲んでるまじか!これ全部読み切ってますよあの子…ヤバい!まじか!」「涙出てきた」「なんだこれは…何なんだ…」「ヤバイ」「なるほどねぇ……」「見てる全員が鳥肌立ってる」「こんなのありか」「あの顔読み切っているよ」といった感じで、想定外の展開で藤井四段の将棋の異次元の凄さに解説にならない解説になってしまっていました。都成四段は「指し進めるうちに模様が良くなり若干指しやすい感じになった。6一銀と踏み込んだ時には勝てると思った」と振り返っていました。
 藤井四段はもともと詰将棋を得意としていて、終盤の詰めには定評がありました。AIを活用することで序盤においても強みを発揮するようになりました。将棋は序盤には体制を整え、中盤以降の戦局に備えますが、AIは少しでも有利な手があると序盤でも積極的に攻めていきます。恐れを知らないAIならではの戦い方だと言えます。藤井四段はこのようなAIの戦い方を取り入れ序盤の強さを手に入れて、今日の快進撃につながりました。ではAIと対戦し戦い方を覚えれば強くなれるかと言えば、163名もの優秀なプロ棋士がいて、AIに接することが可能であることから考えても、容易には藤井四段のレベルには到達できないということが良く分かります。
 1990年代にはチェスの世界でもコンピュータ対人の対戦が行われました。1997人間最高のチェスの名手ガルリ・カスパロフがIBMのスーパーコンピューター(ディープブルー)に負けました。当時はチェスの試合で人間にできることはもう何もないと思われましたが、のちに、コンピュータと人を組み合わせ対戦するフリースタイルが認められました。
 とあるトーナメントの優勝者はアメリカ人のアマチュアプレーヤー二人と3台のコンピューターで編成されたチームでした。二人はコンピュータを操作して学習させる能力に長けており、これが決め手になったと考えられました。対戦相手にはチェスのグランドマスターもおり、もっと強力なコンピューターを持つチームもいたがすべて退けました。
 これは「弱い人間+マシン+より良いプロセス」の組み合わせが一台の強力なマシンに勝てたということです。さらに驚いたことに「強い人間+マシン+お粗末なプロセス」の組み合わせをも打ち負かすことが可能であると証明しました。
 新しい技術が出てくると、その技術にすべてを任せてしまったり、その技術を敬遠したりしてしまうなど、両極端な反応が多いように思います。近い将来AIが人の仕事の半分を奪うという研究もありますが、AIをはじめ新しい技術が出てきたときには、それらに技術をうまく活用し、藤井四段のように自分の能力を高める、あるいはチェスのフリースタイルのように使いこなすなどをしていけば、既存のしごとの置換ではなく新たな価値の創造につながると思います。積極的に興味を持って取り組んでいきたいと考えています。