1月22日にAmazonはアメリカのシアトル市で無人店舗「Amazon Go」を開店しました。「Amazon Go」はセルフレジもない店舗で2016年末に発表され社員向けに試験運用していました。試験運用では混雑時に対応できなかったり、お客の動きが速いと追えなかったり、子供が棚を乱したときに混乱したり、似たような体格の人を誤認したりと課題が多く開店が遅れました。利用者はスマートフォンに「Amazon Go」アプリをインストールしておきます。入店時に入口ゲートにてアプリをスキャンし店内に入ると欲しい商品を取って直接ポケットやカバンに入れ、店を出たときに登録しておいたクレジットカードに課金される仕組みです。店内には複数のカメラ、棚には重量センサーが設置されており、これらの情報をもとに誰が何を取ったのか、戻したのかを判断しているそうです。
New York Timesの記者は店舗から許可を取ったうえで、万引きを試しました。4本のバニラソーダを買い物袋で包み、一度棚に戻してから腕で抱えて店内から出て行ったそうですが、店内のカメラシステムはしっかり4本のバニラソーダを認識しており、アプリ上では料金がしっかり請求され、画面下部には「お買い物ありがとう!」というメッセージも表示されたそうです。
完璧ゆえの課題もあり、友人の代わりに商品を取ってあげた場合には、商品を棚から取った人に課金させてしまうそうなので注意が必要だそうです。
無人レジとしてはアメリカの大手スーパーのクローガーの「Scan, Bag, Go」があります。「Scan, Bag, Go」ではスマートフォン・アプリ「スキャン、バッグ、ゴー」か店内にあるハンディ端末を使います。商品を取るたびにバーコードをスキャンしてかごに入れ、最後にセルフレジで精算をします。あらかじめ買い物リストを作成しておくと、買い忘れが無いように棚の前で教えてくれるそうです。「Scan, Bag, Go」は2018年に400店舗で実施する予定です。
中国にも「繽果盒子(Bingo Box)」という無人コンビニがあります。「繽果盒子(Bingo Box)」は2016年8月に1店舗目をオープンしました。その後、わずか1年余りで広州、大連など約30都市、200店舗体制に成長しました。「2018年秋には5000店舗体制」を掲げています。各商品にはNFC(近距離無線通信)のチップが入ったシールが付いていて、レジスペースに商品をまとめて置くと合計金額が表示されます。支払いに使うのは支付宝(アリペイ)か微信支付(WeChatPay)です。ちなみに会計をしていない商品を持って外に出ようとすると警報が鳴るとのことです。このように無人レジはいくつも実用化されていますが「Amazon Go」の完成度は群を抜いています。Amazonは創業者ジェフ・ベゾスが「顧客中心主義」「発明中心主義」「長期的視野」を掲げ事業を行っており、ECサイトの使い勝手、配送効率の最適化など技術を駆使してECサービスを極めてきました。IT関係の経営者と言えばマイクロソフトのビル・ゲイツ、Appleのスティーブ・ジョブスが有名です。ビル・ゲイツはビジネス面に注力し使い勝手では未成熟だったにも拘わらずMS-DOSやWindowsでPCのOSを制しました。スティーブ・ジョブスは人々の感性に訴えるような洗練された製品を数多く世に出し成功を収めました。3者とも技術に立脚していますが、ビジネス的な手法のビル・ゲイツ、センスを極めるスティーブ・ジョブス、合理性を極めるジェフ・ベゾスとそれぞれの事業領域に合った強みを発揮して成功しました。我々の事業である業務における情報サービスでは、ビジネス面での要素に注力しがちですが、技術を使いこなしAmazonの様に合理化を進める必要もあります。さらに「究極の情報サービス」を実現するためには、お客様のノウハウ(暗黙知)を形式知として見える形にしなければならず、スティーブ・ジョブスのようにセンスを高めていく必要もあります。ジェフ・ベゾスは今も現役でAmazonを率いています、これから更なる進化を期待して注目したいと思います。