平昌オリンピックでは日本勢の躍進が目覚ましく13個のメダルを獲得しました。これまでの最高は冬季オリンピックとしては1998年の長野オリンピックの10個でした。今回の躍進について麻生財務大臣は「選択と集中が大事であり、日本スキー協会はノルディックに資金を集中させ、(複合の個人ノーマルヒルで渡部暁斗選手が)メダルをとった。そういったのが、成果として出てきている。どこにカネをかけているかと言ったら、コーチにカネをかけた。カーリングも外国人。」と述べていました。これらの施策が着々と進み今回の成果につながったとのことです。スピードスケートにおいても従来の実業団主体の体制からナショナルチーム体制に変え今回の成果に結びついた様です。
東京オリンピックが2年後に控えています。今年度のスポーツ庁予算は約340億円で、このうち競技力向上事業(いわゆる強化費)は96億です。国では2015年度以降、強化費として年間100億円を目標に要望していく方針を示してきており、政府の目標は自国開催の東京五輪で「金メダル30個で世界3位」です。予算上は着々と計画が進んでいるようです。各国の強化費とメダル獲得の相関を取ると、メダルの個数は強化費に相関し、ほぼ比例するとのことです。2008年の北京オリンピックの時には27億円の強化費で金メダル9個を含む25個のメダルを獲得しました。このままでいけば東京オリンピックでの日本選手の活躍は間違いないことになります。
NHKのオリンピックを扱った番組でオリンピック開催の5つのメリットの一つに「国威発揚」を上げていたそうです。オリンピックでメダルを多く獲得したから、開催できたからだけでは国威を感じることはないと思います。オリンピックの観戦において、観戦そのものを楽しみ、同じ国の人が世界のレベルで頑張っている姿を見て勇気をもらい、メダルなどの成果が得られて喜ぶ、といった純粋な感情がほとんどだと思います。
金メダルを獲得した小平奈緒選手は相澤病院の所属です。相澤病院は全国的に著名という訳ではありませんが、長野県松本市にある460床を抱える大きな病院です。小平選手が大学卒業の際、コーチだった結城匡啓信州大学教授が小平選手がリハビリ等で通院したことのある相澤病院に相談したことが支援のきっかけでした。以来、相澤病院は小平選手の活動を支援してきました。前回のソチオリンピックでは5位に終わってしまいましたが、その後スケート王国オランダへの2年間の留学を経て、最近の500mでは15連勝と実績と実力を身に着け今回の成果につながりました。小平選手は現在31歳でピークを過ぎた年齢と言われますが、オランダ留学中に最高レベルの環境に身を置き、恵まれた体格の選手の真似をしていてはダメだと悟り、自分に合ったスケートを極め成長しました。その姿は「求道者」と言われます。メダルを獲得するためには強化予算の選択と集中で結果が出るのも事実ですが、小平選手の様に目標を持ち極める人を認め、応援できる文化が我々の社会に根付くよう期待しています。フィギアの羽生選手、モーグルの原選手、スノーボードの平野選手など、家族をはじめ多くの人に支えられ競技を続けオリンピックだけでなく多くの大会で成果を出しています。目標を持つ人や支援する人たち。つまり多様性を認めることが非常に大切です。原始の生物は自分のコピーしかできないので進化するためにはコピーエラーに頼るしかありません。我々は両親から遺伝子をひとつずつ受け継ぐことで多様な個性を生み出すことがかのうであり、その結果進化してきました。遺伝子の多様性のみならず、オリンピック選手のような文化的多様性が出るような社会になっていくよう、多様性を大事にしていきたいと思います。