2018年06月 ハラスメント

2018年06月 ハラスメント

 5月6日のアメリカンフットボールの試合で日本大学の選手による関西学院大学の選手に対する悪質タックル事件が発生しまた。批判が高まる中22日に悪質タックルを犯した選手が記者会見を行い、その翌日に内田前監督、井上前コーチの謝罪会見がありました。真摯に謝罪し自分の言葉で語った選手、明らかに保身と見える言動に終始した前監督、前コーチ。非常に対照的でどちらが指導する立場なのか分からなくなるような会見でした。関東学生アメリカンフットボール連盟は29日に都内で臨時理事会を開いて日大・内田前監督、井上前コーチの指示否定は虚偽とし、永久追放に当たる最も重い除名、森ヘッドコーチを資格剥奪としました。日大は弁護士7人からなる第三者委員会を5月31日付で設置したことも発表しましたが、第三者委員会の結果報告は7月下旬に予定されています。選手や関東学生アメリカンフットボール連盟の迅速かつ真摯な対応とは対照的に日大側に後手後手のうやむやな対応が非常に目立ちます。日大アメフト部のハラスメント構造が問題の原因だと思います。俗にいう体育会体質そのものだと思います。箱根駅伝で4連覇を成し遂げた青山学院大学陸上部は全く対極にあります。原監督は体育会的な悪習は廃止し、寮の掃除なども上級生、下級生関係なく持ちまわりで行うなど、自由に会話が出来る環境を作っているそうです。また、ラグビーの大学選手権で9連覇を達成した帝京大学も脱体育会の指導で有名です。寮内の掃除などの雑用を行なうのは4年生で、1年生はしなくても良いそうです。青山学院大学も帝京大学も選手が自ら主体的に競技に取り組める環境を作り、それが競技を楽しみ、なおかつチームを強くして成果につながったとのことです。
 ハラスメントを生み出すのは体育会の部内だけではありません。閉鎖的な組織で外からの批判にさらされないと権威的な思考と行動に結びつき最悪の場合ハラスメントを生んでしまいます。ナチスの戦犯が特殊であったかどうか検証するミルグラム実験がありました。この実験の結論は「普通の平凡な市民が一定の条件下では冷酷で非人道的な行為を行うことがある」とのことなので、閉鎖的な組織での振る舞いは注意が必要です。志學館大学の栄和人前レスリング部監督は謝罪会見の後に反省が見られないとの理由から解任されましたが、ハラスメントを行う本人は自分の行為をハラスメントであると認識していない場合が多いと思います。多少認識していたとしても認知的不協和や自己奉仕バイアス、正常化バイアスなどの認知バイアスにより誤った認識を持ってしまっています。組織や周囲の人からの積極的な働きかけが必要です。
 仕事においても管理、指導する立場がありますが、この立場の人が絶対的に正しい答えを持っているわけではありません。自らの主観的な過去の経験則に頼ることなく、社会状況、技術動向、常識の変化などに注意を払い、自分の組織のあるべき姿を常に刷新し、組織の一人一人の自律性、主体性を重んじる必要があります。この様な組織、環境を与えてもらった場合は待ちの姿勢では全く成長がありません、自ら主体的に考え、自律的に行動していく責任が発生します。このような働きかけをすすめ、自律的、主体的な組織・仕事を増やしていきたいと思います。