先日の西日本豪雨では220名が犠牲となりました。これは、平成に入って豪雨災害としては最大の被害で、300名近い死者・不明者を出した昭和57年(1982年)の長崎大水害以来の被害です。災害に遭われた方がひたむきに、前向きに生活の再建に向けて作業をしている様子を報道で見ますが、1日も早く普段の生活に戻れるよう祈っています。
このような水害、地震、猛暑などの厳しい自然に接したとき、人間の無力感を感じます。似たような被害を他人から受けた場合、多くの人は「怒り」を感じると思います。エアコンの設定温度が一度違うくらいでもいさかいに発展してしまうこともあります。逆に厳しい自然には怒りが起きないのは当たり前ですが、人間関係の怒りとは非常に対照的です。
NHKの「あさイチ」という番組で怒りに関するアンケートを取ったところ1位が子供、2位が夫という結果となり、怒りは身近な人に向きやすいということが分かります。日本アンガーマネジメント協会の小林浩志理事によりますと、身近なところにいる人はコントロールしやすいという思い込みがあるからだそうです。人は感情をより強く出すことで自分を表現しようとし、怒っていることが伝わらないと感じたら余計怒ります。「怒れば何とかなる」「怒鳴った方が相手に響く」と信じているからです。怒鳴るのは逆効果で、萎縮し、人間関係に殺伐感、恐怖感が生まれます。「恫喝」するのではなく「指導」し、「怒る」のではなく「叱る」ように心がけ、「伝える」のではなく「伝わる」のを意識するのが良いとされています。
怒りの発生パターンは2つあります。1つ目はネガティブな要素に起因する怒りです。怒りは二次感情といわれ、不安、ストレス、悲しみ、妬み、苦痛、身体的な辛さ、自分の弱さ、絶望感、悲観などのネガティブな一次感情が原因になります。心にコップがあると想像し、このコップの中に一次感情がたまってゆき、コップかあふれたときに二次感情つまり怒りがわいてきます。
2つ目は強いこだわりに起因する怒りです。個人の「ものの見方」「考え方の傾向」とは違う事実が目の前で起きたときに発生します。人にはそれぞれ「強いこだわり」「譲れないこだわり」であるコアビリーフがあります。これはべき論に似ていて、自分の目の前で自分の信じている「べき」が裏切られたときに怒りに繋がります。このべき論が自分だけ違うと怒りに繋がる頻度が高くなります。アンガーマネージメント協会ではアンガーマネージメントテクニックを提示しています。横軸に「行動」-「意識」、縦軸に「短期的」「長期的」の2軸のグラフ上に30種類載っています。例えば、短期的な行動での対処としては「ストップシンキング」「カウントバック(6秒)」があります。「ストップシンキング」は怒りに向かいそうになったとき、考えるのをやめる対処方です。「カウントバック」は怒りを感じたとき心の中で6秒カウントする対処法です。
長期的な意識での対処法ですと、「べきログ」「不安ログ」があり、「べきログ」はコアピリーフを知り、客観視することで、自分の怒りの元なる状況を把握し、独善的なルールを見直します。「不安ログ」は不安が自分にとって重要であるか否かで仕分け、重要であるなら「自らコントロールできるか否か」で仕分け、自分の力でコントロール可能な不安解消に傾注します。「怒り」は非常に原始的な情動です、今のコミュニティは常識、倫理観など高度な人間関係を構築できます。原始的な情動に振り回されるのではなく、この情動と上手く付き合いストレスを溜めない関係作りが大切だと思います。