2018年11月 品位

2018年11月 品位

 今年のハロウィンも渋谷に多くの人が集まりました。一部の人が騒ぎ、軽トラックを横転させたり、ラーメン店の券売機に水を流し込み故障させたりしたことが報道されました。多くのごみが放置されるなどマナーの面で課題があります。10月20日の「ふじさわ江の島花火大会」では、置き去りにされたゴミの量は一昨年の3倍となる1トン。内訳は可燃ゴミ6割、不燃ゴミ4割で、特にレジャーシートが多かった。ゴミステーションに置かれたゴミも一昨年の2倍の150キロだったそうです。大会の途中から大雨に見舞われ、多くの来場者は緊急避難した影響が大きいとは思いますが、マナーという面では非常に問題があると思います。
 サッカーW杯ロシア大会でコロンビアに歴史的勝利をおさめた試合でも、日本のサポーターたちは試合の後、興奮に我を忘れることなく、持参した大きなゴミ袋を手に持ちスタンドの清掃をしました。BBCやロイターなど海外のメディアは日本人のマナーを称える報道をしていました。
 2011年の東日本大震災の時の日本人の行動について『ハーバード白熱教室』で有名なマイケル・サンデル教授は「あれだけの震災に遭いながらパニックも起こさず、(2005年に米国南部を襲った)ハリケーン・カトリーナの時に見られた強盗も便乗値上げもなかったことは驚きだった」と称賛していました。
 どれも同じ日本人の行動ですが、非常に極端な印象を受けます。国民性をジョークで表現するエスニックジョークがあります。『沈没船ジョーク』が有名です。ある大型客船が沈没しそうになり、救助ボートの定員以上の乗客がいて若い男性たちには移乗を諦めてもらうしかありません。アメリカ人には「それであなたは英雄になれる」。イギリス人には「それが紳士たるものの勤めです」。ドイツ人には「それがルールになっています」。イタリア人には「あとで女性にうんとモテる」。日本人には「他の方もそうなさっています」。と言って説得するというジョークです。結構言い得ていると感じます。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という言葉があるように、我々は集団に流されやすい気質を持っているので、品位を落とさないよう注意する必要があると思います。
 一方、仕事に対する評価は容易ではありません。マーケットからは金銭面(価格)で評価がされます。これは必ずしも本質的な評価がなされているわけではなく、希少性で高評価(価格)になることが多くあります。仕事面で成果が出たとしても一時の評価であり、実力を表しているわけでない点に注意が必要です。アインシュタインは「成功する人間になろうとせず、むしろ価値ある人間になろうとせよ。」と言っています。ここでいう価値は仕事においては実務能力が重要ですが、倫理観、特に品位も実務能力以上に重要です。これまで多様な国、地域、業種の方と仕事を通じ接してきました。これらの観点で感銘を受けることが何度もあり、そのたびに自分の未熟さを痛感します。これらの能力は一朝一夕に身につくものではなく、日ごろからの努力の賜物で、他人から見えるのは氷山の一角です。ついつい見えている差だけ注目しがちですが、未熟な者が近いレベルに達するのは見えている差の何倍もの努力の蓄積が必要だと思います。色々なニュースの中の悪い面を反面教師として理想とする人や組織に近づけるようこれからも価値を高めるようにしていきたいと思います。