菅義偉官房長官が4月1日、首相官邸で記者会見し、新しい元号は「令和(れいわ)」と発表しました。典拠は奈良時代に完成した日本に現存する最古の歌集「万葉集」です。万葉集にある大伴旅人(おおとものたびと)たちが詠んだ歌の序文「初春(しょしゅん)の令月(れいげつ)にして、気淑(きよ)く風和(やわら)ぎ、梅は鏡前(きょうぜん)の粉を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香(こう)を薫(かお)らす」(書き下し文)から二文字をとったとのことです。
京都大の阿辻哲次名誉教授は「万葉集によると、『令月』とあるのは『素晴らしい月』という意味」と言っています。新元号決定の議事要旨によると「音の響き」「国書から典拠」が令和に決定された理由です。令の字に関しては命令を連想するなど一部批判的な意見もありますが、読売新聞社、産経新聞社、Yahooなど、多くのメディアが独自にアンケートを実施していますが概ね6割以上、多いものでは8割以上が良いと答えていました。安倍首相は談話のなかで「“令和”には、人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つという意味が込められています。」と述べています。より良い時代になってほしいと考えています。
日本の元号はもともと中国に由来し大化の改新(645年)から現在に至るまで続いています。江戸時代までは天皇の交代以外にも災いや、戦乱などがあると改元していました。一世一元が定着したのは明治以降です。明治の前の孝明天皇の時には弘化、嘉永、安政、万延、文久、元治、慶応の7つの元号が使われ、短いときで2年長くても7年で改元していました。改元のきっかけは、江戸城火災、安政の大地震、黒船来航、桜田門外の変などの禍によるものです。
中国は1945年に満州国が滅亡して以降、元号を使われることが無くなりました。世界的には西暦がスタンダードとなり非常に稀な制度になりました。当社でも数年前から西暦で統一しています。日常生活においては公的な書類くらいしか元号を使わなくなってきています。平成の30年間で多くの場面でコンピュータが使われるようになりました。今回の改元で多くの改修が必要となり社会的なコストが発生しています。効率の面から考えると元号は無駄の様に感じるかもしれません。しかし、昭和、平成などそれぞれの時代に対する我々の情緒は存在し、一人一人がそれぞれの時代に対する記憶や想いを持っています。非常にまれな制度ですが、長く続けることが我々のアイデンティティの一部になります。やめてしまうのは簡単かもしれませんが、アイデンティティがどんどん無くなっていきます。今回の改元を乗り越えることで我々の社会はIT化の時代においても改元を自分たちのものにしました。グローバル化、IT化に伴い合理化が進み、アイデンティティの重要性は増していきます。今後も、様々な伝統を時代に融合して、新しい文化を創っていきたいと考えています。