2019年06月 品格

2019年06月 品格

 天皇即位後の最初の国賓としてトランプ米大統領が来日しました。ゴルフ、相撲観戦など安倍首相のもてなしで日本を満喫しているようでした。5月27日には宮中晩餐会が開かれました。テレビで中継していたので見ていましたが、トランプ大統領の態度がこれまでとは違い非常に神妙になっていました。スピーチでも万葉集を引き合いに出し令和の元となった大伴旅人だけでなく、山上憶良にもふれ、「これらはいずれも古来の叡知から受け継がれてきた美しい教えです。」と敬意を持った内容でした。晩餐会の最中も天皇、皇后に対して非常に丁寧に会話をしている様子が非常に印象的でした。晩餐会後アメリカのCNNテレビでは、同行しているホワイトハウスの記者のリポートとして、通訳を交えずに両陛下と夫妻が会話をしていて、「さすがだ」とコメントをしていました。他にも多くの報道で天皇、皇后の語学を称えていました。天皇は英オックスフォード大学に留学経験があり、皇后もニューヨークの幼稚園、ボストン郊外の高校、そしてハーバード大学で学んでいるので語学が堪能なのも当然です。トランプ大統領は英語が上手だからあのような態度になったわけではなく、たとえ、通訳を通じ会話をしたとしても同じ態度になったのだと思います。
 元外交官の岡崎久彦氏は「外交交渉で最後に物をいうのは、その人の持つ人間性と教養だ」と言っています。トランプ大統領も日本、そして皇室のもつ文化や伝統、天皇、皇后の人柄や教養などに敬意をもっているため、今回のような態度になったのだろうと思います。
 1860年幕末に江戸幕府の使いとして万延元年遣米使節団がアメリカに行きました。正使および副使に、共に外国奉行および神奈川奉行を兼帯していた新見正興と村垣範正が任命されました。この一行には勝海舟、ジョン万次郎や当時25歳だった福沢諭吉が同行していました。彼らは髷を結い、羽織・袴姿で、腰に両刀を差した姿で「ニューヨーク・ヘラルド」紙は彼らを「星からの珍客」と評しました。しかし、日本人一行の装束の美しさ、お辞儀などの気品ある振る舞い、温厚で慎み深く、人懐っこい点などに、人間的に魅力を感じたようです。「ニューヨーク・タイムズ」紙は「彼らは世界で最も洗練された人たちである。態度は優雅であり、容貌も柔和である。風采(ふうさい)も気持ちのよいもので、われわれには奇妙に見えるけれども、日本人から見れば、やはりわれわれも奇妙に見えるだろう」と評するようになりました。また、為替の交渉の際には、日本から持参した天秤、そろばんを使い、精度高く、素早く計算しアメリカ人を驚かせたそうです。
 当然彼らは英語を話すこともできませんし、姿形も全く異なるため最初は戸惑いがあったと思います。立ち居振る舞い、実務能力など中身に触れたときにはじめて、実態により近い評価ができます。言葉は大事ですが中身の方がもっと大事です。他者から評価されるような品格は簡単に身に着けることはできませんが、品位のない行為(卑怯なこと、みっともないこと、偽わる、欲(本能)を出す等)は謹んで、謙虚な態度を心がけていきたいと思います。
 当社は今年創業47年目に入りました。長く続けてきたという形だけでなく、伝統や企業文化をこれまで以上に洗練し、真に評価いただけるような組織にしていきたいと思います。