2019年07月 数字

2019年07月 数字

 数字は我々の身の回りにある物を正確に記録するために作られました。メソポタミア文明では文字よりも早く使われるようになったようです。数を直接数えるための数字から様々な事柄を表すようになりました。生活の中には数字があふれ、数字が無ければ生活、経済が成り立ちません。一旦数字にしてしまうと、ほとんどの場合疑問を持つことはありません。文部科学省の平成30年学校保健統計調査によりますと17歳男子の身長の平均値は170.6cm、体重の平均値は62.3kgです。統計の代表値には平均値以外に全体を並べたとき真ん中に来る値である中央値や一番頻度が多く出る値である最頻値があります。身長の中央値は170.5cm、最頻値は171cmです。身長に関しては171cmを中心として高低両側に対称な釣鐘のような分布をしているため3つの代表値がほぼ一致します。一方体重の中央値は60.5kg、最頻値は58kgとなります。体重は重い方に多く分布しますので、軽い方ではすぐ落ち込み、重い方ではだらだらとなだらかに落ち込む非対称な分布になります。中央値は軽い方から数えて50%ですが、平均値は60%、最頻値は40%となります。体重が平均だからといっても安心はできません。真ん中よりも10%も重い所に位置することになります。クラスの中で体重別に手を上げたとき、一番多く手を上げる体重が最頻値ですので、感覚的には最頻値が標準的な値を示すと思います。平均値は非常に良く使用しますがこのように対象とするものの分布によって意味合いが変わってきます。数字は正しく算出していますので事実ですが、必ずしも実態を正しく表しているとは言えません。金融庁金融審議会市場ワーキング・グループ報告書で年金生活に必要な金融資産を公表し問題になっています。このワーキンググループで厚生労働省が提出した資料では、高齢者の金融資産のグラフを提示していて二極化している様子が分かります。このような分布では算数的に正しく平均を算出したとしても実態を正しく表しておらず意味を成しません。そもそもこの数字を使って議論をすること自体に疑問を感じています。厚生労働省の国民生活基礎調査では年齢階級別にみた悩みやストレスの原因の順位の調査結果があり、65歳以上では「自分の病気や介護」が一番多く41.5%、「家族の病気や介護」が次に多く19.2%、収入は18.1%でした。感覚と数字が違う例について会話することが最近ありました。「最近のニュースは殺人事件ばかりで、しかも親族の事件が増えている感じがする。」というものです。警察庁の「平成29年の刑法犯に関する統計資料」に統計結果があります。殺人事件に関して面識あり、親族といった内訳に分類し推移を示しています。なだらかに推移していますので平成20年と平成29年で比較し、検挙率は95%~100%なので認知件数ではなく内訳が明確な検挙件数をみてみます。殺人事件の検挙件数は1138件から848件に25%減少しています。このうち面識ありが87%、親族が49%とH20とH29は変わっていません。既遂が475件から243件に49%減、未遂が663件から605件に9%減です。既遂の面識ありは416件から224件の46%減、親族は271件から143件の47%減。このように既遂・親族の殺人事件は大幅に減少していることが分かります。報道ではニュース性の高い事件が優先されるため我々の現状認識がずれてしまっています。このような現象は身の回りに多く存在すると思いますので可能なら数字を確認することで認識のずれを修正し必要以上におびえたりすることを避けることができます。会社の運営には多くの数字が係ってきますが、意味のある正しい使い方を心がけていきたいと思います。