2019年08月 正義

2019年08月 正義

 常磐道自動車道であおり運転殴打事件がありました。ドライブレコーダには執拗にあおり運転を繰り返し、高速道路上にも関わらず車を止め、「殺すぞ」と怒鳴る姿が映り、被害男性を殴打しました。報道されている内容を見る限り、非常識で言語道断な行為で厳に取り締まるべき行為だと思います。この事件に関して国際政治学者の舛添要一氏は「宮崎容疑者が酷いのは言うまでもない。ただ自分もよく運転をするが、高速道路の追い越し車線をゆっくり走行する車が多すぎる。ドイツのアウトバーンでは速い車しか追い越し車線にはいないし、速い車が後ろから来たことを認識したら自動的に下がる。一方、日本の高速は何をやっても動かないことが多い。これは道路交通法違反だ。追い越し車線は“追い越し”が済んだらすぐ戻らないといけないのに、なぜ警察はスピード違反ばかり取り締まって、このようなドライバーを取り締まらないのか。あおり運転を誘発するドライバーも取り締まるべきで、どんどん追い越し車線のノロノロ運転も逮捕するべきだ」と述べています。「盗人にも三分の理」という諺がありますが、加害者の観点で少し考えてみます。宮崎容疑者は普段から高速道路を猛スピードで運転し、追い越し車線に遅い車がいると、怒りに火が付き、あおり運転に繋がるようです。宮崎容疑者にとっては追い越し車線は早く走るべきであり、ゆっくり走るのは言語道断、よって成敗されるべしといった理屈と推測します。日頃から確信犯的にあおり行為を繰り返していたそうです。これが宮崎容疑者にとっての正義であり、「正義のためにあおり運転、殴打は認められる。」と考えているように思います。
 近江商人の経営哲学のひとつとして「三方よし」が広く知られています。「商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそよい商売といえる」という考え方です。一言に「よい」と言っても立場の違いで見方は変わります。
 日本郵便はかんぽ生命の最大9万3000件に上る不適切販売が問題になっています。日本郵便の過大なノルマ、硬直した組織文化が原因だと思います。不適切な契約では売り手(日本郵便)だけか「よし」となり、買い手(契約者)や社会からみたらあってはならない行為となります。
 就活情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが、学生の個人データから内定辞退率を予想し、その情報を本人の同意が不十分なまま企業に販売し、問題となっています。この場合は、売り手(リクルートキャリア)と買い手(購入した企業)にとっては「よし」なのかもしれませんが、学生や社会から見れば非常識なビジネスとなります。
 日本郵便やリクルートキャリアの当事者は非常に狭い範囲で正義が強調されてしまい、この正義により自らを正当化し確信犯的に不正行為に至ったのだと思います。古代ギリシアの哲学者プラトンは正義には個人の正義と国家の正義は一致すると言っています。現代は人々が多様化しグローバル化、IT化により価値観が複雑になり日々変化しています。身近な正義にとらわれることなく、社会の変わりゆく価値と正義を常に意識していきたいと思います。