2019年12月 偏見

2019年12月 偏見

 11月20日東京大学大学院情報学環・学際情報学府の大澤昇平特任准教授が「中国人のパフォーマンスが低いので営利企業じゃ使えない」とツイートして炎上しました。24日には、東京大学情報学環・学際情報学府(以下、学環・学府)は、学環・学府長名義で「学環・学府特任准教授の不適切な書き込みに関する見解」と題した文書を発表。大澤特任准教授のツイートを“不適切”とした上「学環・学府構成員から、こうした書き込みがなされたことをたいへん遺憾に思い、またそれにより不快に感じられた皆様に深くお詫び申し上げます」と謝罪した。その後12月1日になり「特定国籍の人々の能力に関する当社の判断は、限られたデータにAIが適合し過ぎた結果である“過学習”によるものです」と意味の分からない説明を行い、「誤解のおそれのあると見られるツイートを削除し、今後は本業と関係のないツイートは自粛します」と謝罪しました。
 80年代後半私が学生の頃、学徒援護会東京学生会館でアルバイトの斡旋をしており、学業の時間が空くと利用していました。理系で課題等拘束時間が多かったため単発の日雇いの仕事がメインでした。中国の方もアルバイトを同じように斡旋してもらっていて、同じ仕事をすることもありました。その時の印象は「とにかく働かない、隙をみてはサボる」でした。天安門事件よりも前の時期、古い社会体制の下で育ったためなのかもしれません。しまいには、アルバイト募集の張り紙に、かなりの割合で「除く中国人」と書かれていましたので、全体的には同じ印象を持たれていたのだと思います。
 1992年末の第14回中国共産党全国代表大会で鄧小平は中国政府の責務は1990年代に「社会主義市場経済」を構築することだと述べ、中国の経済体制の大幅な変革が推進されました。2010年にはGDPで日本を抜いて世界第二位の経済大国になりました。
 経済発展に伴い学力も向上し、イギリスの高等教育情報誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーションズ」が今年9月に発表した「世界大学ランキング2020」によると、トップ100に日本の大学は36位の東京大学と65位の京都大学の2校だけでした。トップ200までも東大、京大の2校のみです。
 中国は23位に清華大学、24位に北京大学がランクインしており、トップ200には5校を足して、計7校がランクインしています。東京大学先端科学技術研究センター教授・西成活裕氏によりますと「ここ4~5年、東大にいる中国人留学生が全体的に優秀になっている印象があります。かつては優秀な子もいれば、そうでない子もいて、玉石混交の状態でした。ところが、最近は日本人の学生はもっと頑張らないと厳しいと思えるほど、優秀な中国人留学生が増えています」とのことです。
 近代経済の父と言われる渋沢栄一は「論語と算盤」を執筆し道徳と経営の合一を訴えました。孫氏の兵法もビジネス戦略に頻繁に応用されます。我々の使う漢字は元々中国が起源ですし、文化・文明のかなりの割合を中国に依存しています。逆に近年では稲森和夫や孫正義など日本の経営者にまなぶ中国経営者が多いようです。隣国故に悪い所が目につくこともありますが、互いに良いところを高めあえる関係になると良いと思います。