2020年04月 新型コロナウイルス

2020年04月 新型コロナウイルス

 2019年度はお客様・仕事に恵まれ、社員の皆さんのご尽力で健全な形で締めくくることが出来ました。ありがとうございました。各部門とも課題も明確となり2020年度はさらに加速していこうというフェーズでしたが、国内での新型コロナウイルスの感染拡大、そして4月7日の緊急事態宣言を受け先行きが非常に不透明となっています。一連の騒動の中ではじめて耳にしたPCRや8割減の元となる基本再生産数、実効再生産数について考えてみたいと思います。
 今もPCR検査が広がらず、検査をしてもらえない人が多数出ていてニュースになっています。ダイヤモンドプリンス号の集団感染の時にも、スクリーニングをすべきかという議論がありました。PCR検査は感度と特異度という確率があります。感度は陽性の人を陽性と判定できる確率、特異度は陰性の人を陰性と判定できる確率です。つまり、陽性、陰性の他に感度で誤って陰性として判定してしまう擬陰性、特異度で誤って陽性と判定してしまう擬陽性が出てしまいます。新型コロナウイルスのPCR検査の場合、感度は70%、特異度は99%と言われていますので、偽陰性は30%、擬陽性は1%となります。実際に検査をしたときに偽陰性、擬陽性の出る数は検査対象のうちの陽性者の割合に依存します。これは一般的に条件付確率の考え方を用いると計算ができます。例えばダイヤモンドプリンス号の場合、乗員、乗務員合わせて3711人のうち712人が感染しました。これは19.19%の人が感染したという事になります。このような集団に上記の感度、特異度のPCR検査を一度実施すると陽性が498人、陰性が2969人、偽陰性が214人、擬陽性が30人と判定されます。214人も陽性なのに陰性と判定され、30人が陰性なのに陽性と判定されてしまいます。このため、実際に行ってきたように重症の方、症状のある方、濃厚接触者など確率が高い方から検査したり、何度も検査を繰りかえす必要が出ますし、感染者が増えてきた場合には自分も陽性の可能性が高いという前提で行動する必要があります。4月23日時点での東京都の陽性者数は3,439人です。東京都の人口はおよそ1,400万人なので陽性者の割合は0.025%となります。このような集団の1万人にPCR検査を実施すると陽性が1.7人、陰性が9897.6人、偽陰性が0.7人、擬陽性が100人となります。1.7人の陽性者に対し100人も陰性なのに陽性と判定されることになります。このように感染者の割合が少ない場合、スクリーニングのように広範な検査は注意が必要です。
 4月7日の緊急事態宣言の際に安倍首相は「人と人との接触を最低7割、極力8割削減」すれば、緊急事態を1ヶ月で脱出できると訴えました。8割という数字は厚生労働省のクラスター(感染集団)対策班の一員でもある北海道大の西浦博教授がまとめ4月3日に発表した数字です。一律8割減という数字には大いに違和感がありました。翌日のNHKのニュースに政府の諮問委員会の尾身茂会長が出演し8割の内訳を「接触8割減には…3密・夜の街10割減と外出8割減と仕事4割減」と説明しました。しかし、その後同様の話を耳にすることは無く、10割減で特定の事業者に対する対応の責任を回避しているようにも感じてしまいました。専門家会議の資料では新型コロナウイルスは一人の感染者がドイツ並みに2.5人に感染させるとし、この数字を基本再生産数といいます。人と人との接触の頻度が変わらない場合には基本再生産数に準じて感染が広まりますが、実際には接触の割合が減り感染する人数も変わります、これを実効再生産数といい、接触が半分になった場合には実効再生産数は1.25となります。実効再生産数が1の場合は新規感染者数は横ばいになります。実効再生産数を1より小さくすれば新規感染者数が減ってきます。西浦教授の提案する8割減は実効再生産数に換算すると0.5となり、二人の感染者が居ても新規感染者は一人しか発生しない状況と言えます。専門家会議によると3月末時点の実効再生産数は1.7でした。現時点で週単位でみると新規感染者数は減少しているようにも見えます。多くの人が我慢している結果だと思います。ただ、一部の自分勝手な人たちがクラスターを発生させて、周りの人に迷惑をかけているニュースもまだあります。まだ自粛は続きますが情報を正しく理解し、メリハリのある対応をしていきたいと思います。