8月4日、大阪の吉村知事は記者会見で「うそみたいな本当の話で、うそみたいなまじめな話をさせていただきたいと思います。皆様もよく知っているうがい薬を使ってうがいをすることによって、コロナの患者さん、コロナがある意味減っていく。コロナに効くのではないかという研究が出ました。」と発言しました。一時店頭でイソジンが品薄となり、4日の会見の朝6,006円だったイソジンを取り扱う「塩野義製薬」の株価が50分で6,216円まで高騰し、インサイダー疑惑まで浮上し、ちょっとした騒動になりました。
会見に同席した医療センターの松山晃文・次世代創薬創生センター長によると、この研究は府内で宿泊療養している軽症者と無症状者計41人を対象に行われました。1日4回ポビドンヨードによるうがいを実施する群と、実施しない群とに分けて、それぞれ毎日PCR検査を行ったところ、うがいを実施したグループで唾液ウイルスの陽性頻度が低下。4日目には非実施群の陽性率が40.0%だったのに対し、実施群は9.5%まで下がっていたそうです。この研究の結果を受けて吉村知事の「嘘みたいな本当の話」発言となりました。その後各方面から批判が相次ぎました。5日に吉村知事は「誤解されている。予防効果があるとは言っていない。予防薬でも、治療薬でもない」と釈明し、買い占めをしないよう改めて求めました。
イソジンは強い殺菌効果を持っており、傷の消毒や感染症予防に使われてきています。イソジンのHPに効果のある細菌、ウイルスが掲載されており、MERSコロナウイルス、SARSコロナウイルスにも効果があるとしています。
研究の対象が感染者であり、陽性率で評価しているので吉村知事の「コロナがある意味減っていく、コロナに効く」という、コロナが治るような言い回しになってしまったのだと思います。翌日のテレビで松山センター長は「新型コロナウイルスは口の中で増えていくのが特徴。飛沫による感染が多いのもそれが原因で、口の中でウイルスが増えることを抑えるのが感染を防ぐことにつながる」と発言しており、本来は、感染予防の効果の評価を目的にしていたものが、誤った認識で大きな誤解に繋がってしまったのだと思います。
京都大学川村孝元教授らが、ポビドンヨードのうがいは、水でのうがいに比べてむしろ風邪にかかりやすくするという結果を報告しています。イソジンは強い殺菌効果があり正常な細菌を破壊してしまうためのようです。うがいで日常のかぜ予防には水うがいで対応し、ヨード液は感染が明らかな時に用いるなど、使い分けが大事だと話しています。
真偽不明の情報や虚偽の情報(フェイクニュース)が流布し、これを多くの人が真に受けてパニック状態になることをインフォデミックといいます。新型コロナは未経験かつ多くの人に影響があります。偽の情報、事実だが必ずしも正しく理解していない情報など不確実な情報がこれまで以上に多く流布します。イソジンの件も吉村知事の会見だけでなく松山センター長の実験の内容をよく理解すれば大きな誤解は無かったはずです。多くの情報の中からより正しい情報を選択し、より良い判断をする必要があると思います。