スウェーデン王立科学アカデミーは、2020年のノーベル経済学賞を米スタンフォード大学のポール・ミルグロム教授とロバート・ウィルソン名誉教授に授与することを決定しました。受賞理由は「オークション理論の発展と新しいオークション形式の発明に」でした。12月10日の授賞式はコロナウイルスの影響で受賞者の居住地からのオンラインで開催されました。王立科学アカデミーは、「電波の周波数の割り当てなど、従来の方法では売ることが難しかったモノやサービスに使われる新たなオークションの制度設計を行い、世界中の納税者などの利益につながった」としています。NHKによると「2人の研究成果は、1990年代のアメリカで、それまでは政府の認可手続きが必要だった電波の利用免許について、より高い金額を示した事業者に割り当てる、「電波オークション」の制度設計に役立てられました。」とあります。日本以外の先進国はオークション理論を活用し電波を有効利用しています。
日本では2011年に総務省が「周波数オークションに関する懇談会」で検討を実施しています。また2017年当時の菅官房長官は「電波は国民の共有財産であり、有効利用されることが極めて重要だ。海外の動向も参考にし、電波の効率的な利用に資する方策を引き続き検討していきたい」と述べ、前向きな考えを示しています。
東京スカイツリーは関東の多くの範囲をカバーしていて、関東広域圏東京親局によりますと西は八王子市、南は三浦半島、北は鹿沼市、東は鹿島市をカバーしています。山などの障害物がなければ最大80kmくらいは届くようです。東京スカイツリーの一つの基地局で約20万平方kmをカバーします。MCA社の調査によると2014年の時点でNTTドコモは中程度出力のマイクロセルと呼ばれる基地局が23区で約2,000ほど設置されているとしています。23区は627.6平方kmですので1/300の面積に2,000倍の基地局を設置していることになります。電波の情報流通量はおおむね基地局の数に比例しますので、単純に比較すると同じ周波数帯域を携帯電話で使う場合は約60万倍も効率よく活用できることになります。
2011年のアナログ放送からデジタル放送への移行で62チャネル(6MHz×62ch)を40チャネルに減らして携帯などの用途に開放しましたが、まだ不十分です。東京都ではケーブルテレビの普及率が80%を超えています。今年の4月からはNHKプラスという番組配信サービスが始まっています。NHKプラスはインターネット経由で好きなときに番組を視聴できて便利なので活用しています。放送波を使わなくてもテレビ番組を視聴できる手段は多くあります。現在地デジで使用されている470MHzから710MHの240MHzという帯域は2018年7月末現在でNTTドコモに割り当てられている帯域に相当します。電波の使用に関しては既得権が大きく影響していると言われています。電波は目に見えませんが我々の大切な資源です。有効に活用することでより多くのメリットを享受することが出来ます。政府主導の携帯電話値下げが電波を有効に使う覚悟の表れと信じ、今後電波だけではなく我々の大切な資源が有効に活用されることを期待します。