社長 渡辺直企
明けましておめでとうございます。2021年が始まりました。昨年は新型コロナに振り回された1年でした。年末にはアメリカやイギリスでワクチン接種が開始されましたが、依然として猛威を奮っており、日本でも第三波が収まる気配がありません。昨年は9月に菅政権が発足し、所信表明演説でも、新型コロナ対応に言及し「国難の最中(さなか)にあって、国の舵取りという、大変重い責任を担うこととなりました。<中略> 躊躇なく、必要な対策を講じていく考えです。」と表明しました。「今回の感染症では、行政サービスや民間におけるデジタル化の遅れ、サプライチェーンの偏りなど、様々な課題が浮き彫りになりました。」として、デジタル化と規制改革の実現、デジタル庁の設立を掲げています。各省庁や自治体の縦割りを打破し自治体のシステムの統一・標準化を今後5年で行うとしていますので、行政サービスが便利になっていくよう期待しています。デジタル化が進むことで新しいサービスを早く簡単に創出することが可能になります。デジタル化が進む世界ではこれまで以上に変革が加速し、求めるべき価値が変わっていきます。そこで今年の指針は「進化する進化 進化する真価」としました。
我々は、農業による定住、家畜による労働力の代替、風力、水力などの自然エネルギーの活用、産業革命における蒸気機関や紡績機械などの発明など使える力を増やし、仕事を自動化することで生産能力を増やして来ました。その後1946年に初のコンピュータである真空管を使ったENIACが開発されると、その後真空管がトランジスタに代わり、集積回路が発明され、集積回路の高集積化により現在のような計算能力が身近になりました。コンピュータを活用することで計算の代替、機械の自動化等、人が携わってきた仕事が置き換えられてきました。そして2000年前後になるとインターネットが普及しはじめ、これまで物理的に離れていて難しかったWebブラウザでの情報取得、ECサイトでの購買などが可能になりました。いわゆるインターネット・バブルです。インターネット・バブルの際にはAmazonのようなECサイトなどで実店舗では揃えきれないくらいの商品を取り揃えて新しい需要を生み出しました(ロングテール)。このように技術的な工夫を行うことで既存の物理的な力や技術、情報やサービスなど目にみえるモノを変えて少しづつ新しい価値を追加しながら進化して来ました。
その後計算速度は向上し1996年に日立製作所が東京大学に納入したスーパーコンピューター(SR2201)の当時世界最速の600GFLOPSという性能は、いまやAppleのGPU(A14 Bionic)の824GFLOPSが上回りiPhone12として手の中に収まります。Ciscoによりますと世界のIPネットワークで流通するデータ量は2016年には96エクサバイトでしたが、2021年には278エクサバイトと5年で3倍近く増加すると予想しています。またIDCの発表によると世界で生成、消費されるデータの総量は2010年には988エクサバイト、2020年には59,000エクサバイトとこの10年間で約60倍に増加しています。この傾向はこれからも続き、政府のデジタル化を始め、車やIoTといったモノのインターネット化、中央銀行を巻き込んだデジタル通貨の実現などまだ多くのデジタル化が進んでいきます。多くのモノ、サービスがデジタル化されることで、膨大なデジタル資源を得ることになります。その結果デジタル同士の新たな組み合わせが可能となり、これまでのような既存の手続きやサービスのデジタル化だけでなく、デジタル上の新たな価値の創造が増えていきます。つまり、進化そのものが変わっていきます。これを「進化が進化」するとしました。このように進化が加速し、新たな価値が創造されていくと、これまで、人が介在しなければならなかったような判断や手続きが代替されて仕事の価値が変わっていきます。そして残された真価はこれまで以上に洗練された真価になっていきます。つまり「真価が進化」していきます。コロナ禍でデジタル化の重要性が再認識されています。今後我々を取り巻く環境は加速度的に変わっていきます。この変化を「進化する進化 進化する真価」という観点で受け止めることで、変化を味方につけていきたいと思います。