2月17日よりワクチンの接種が始まりました。医療関係者から始まり、その後、高齢者、基礎疾患を有する方等の順に接種を進めていく見込みとのことです。昨年の「ダイヤモンド・プリンセス」での集団感染から一年間、4月の緊急事態宣言に始まる一連の新型コロナ対策が続いていて経済的、精神的に困憊した閉塞感の中で少しだけ希望が見えた気がしています。昨年、日本感染症学会と日本環境感染学会が感染症に関する意識調査を行ったところ、新型コロナウイルス感染症のワクチンが仮にあった場合、「接種したい」と回答した人が約7割に上ることが明らかになりました。接種したくない理由としては安全性や副反応に対する心配が上げられています。通常なら5年以上かかるワクチン開発が今回は1年で接種開始というスピードに不安を感じるのは理解できます。インフルエンザなどの従来のワクチンは鶏の卵を用いウイルスそのものを増殖させたのち、不活化等の処置をしてワクチンとします。ファイザーなどが開発しているmRNAワクチンは、ウイルスの一部(新型コロナの場合はスパイクというウイルスの外側の突起=タンパク質)だけ取り出し、RNAを人工的に合成しワクチンとします。ウィルス本体を含まず、ウイルス全体の12.8%(3841塩基対)と少ないタンパク質のみを使用しますので、ウイルスそのものを使うワクチンよりも安全性は高いと思います。未知のタンパク質を体内に取り込むのでアナフィラキシーなどの副反応は100万接種あたり4.5件程度と一定の確率で発生しますが、適切な対応を行うことで重篤化を防ぐことは出来るそうです。Google Trendsという検索キーワードのトレンドを調べられるサイトがあります。ここで「ワクチン」を調べると今年に入ってから検索数が急激に伸びていることが分かります。また、「ワクチン」の関連キーワードでは第三位に「コロナワクチン副作用」とあり副反応に対する関心の高さがよく分かります。副反応に関する報道も目にしますが、上記のようにリスクに対して過大な気がしています。新型コロナウイルスはインフルエンザに比べれば感染確率も高く、重症化の割合も大きい感染症です。「接種」か「副反応」の2択ではなく、「接種」か「今後も常に感染を恐れる生活を続けるか」の2択になり、自ずとどちらを選択するか決まると考えています。報道は受け手が興味を引くインパクトのあるニュースを選んで報道する傾向があります。副反応は事実ですが、ワクチン接種の効果とリスクという全体観から考えると必ずしも真実を伝えていることにはなりません。MITが450万回以上話題にされたニュースなど12万6千件のツイートを解析したところ、誤った情報は真実の1.7倍リツイートされる可能性があり、デマが1500人に伝わるまでの速さは、真実の6倍だったとのことです。デマでなくても少しでもインパクトのある話題を報道したいという背景が良く分かります。FacebookおよびInstagramは「COVID-19に関する虚偽投稿」を、これまでに1200万件以上削除してきたそうです。新型コロナウイルスワクチンに関する誤情報を拡散するFacebookおよびInstagramのアカウントリストを作成し、これらをBAN(アカウント凍結)するとしました。WHOが使い始めた造語で「インフォデミック」があります。正しい情報と不確かな情報が大量に混ざり合い、信頼できる情報源や知識が必要な時に見つけにくくなってしまう状態を指します。新型コロナウイルスの流行当初は「お湯を飲むと良い」などの誤情報が拡散しました。これからワクチン接種が続き環境が変わっていきます。正しい情報を見極め、目先の数字に気を緩める事もなく、一日も早く感染を恐れる必要のない日常を取り戻したいと思います。