2月17日にワクチン接種が始まりました。首相官邸HPによると6月23日の時点で医療従事者と高齢者を含む一般摂取合わせて3,579万回の接種が終了しています。ニュースで「ワクチン接種翌日94歳男性死亡因果関係は不明」のようなタイトルをよく目にします。多くの記事は「ワクチンとの因果関係は不明」「国が調査中」などと記載し、明確な因果関係の記載をしていません。人は生き残るための本能として恐怖に対して注目する傾向があります。このようなタイトルは必然的に目に止まり、根拠もなく不安な気持ちになってしまいます。厚生労働省の分科会で提出された資料によりますと、2月17日から6月13日までの117日間で2,300万回接種が実施されました。死亡として報告された事例は277件でした。これは0.0012%の確率です。報告事例の接種日からの発生日の日数を見ると多くは一週間以内、長いときでも2週間程度です。また2019年の65歳以上の人口は3588万人、年間に125万人が亡くなっています。年間の死亡率は3.48%となります。2週間だと0.134%、1週間だと0.067%の死亡率となります。比較的突発的に発生する死因のくも膜下出血、脳内出血、心不全、心筋梗塞、脳梗塞、大動脈瘤、肺塞栓症や自殺などで年間20万人が亡くなっています。この場合でも2週間で0.021%、1週間で0.015%の死亡率ということになります。
当然277人の方は接種に関係すると限定するので少なめにカウントされている可能性も考えられますが、内訳を見ると心不全37例、脳卒中30例、心肺停止30例、心疾患28例など突発的な死因が多く、分科会でも「死亡例の報告に関しては、被接種者の属性の変化や海外の報告状況も鑑みて、現時点においては引き続きワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められない」としています。
非営利団体Center for Countering Digital Hate(CCDH)と反ワクチン業界を監視する団体Anti-Vax Watchは、「FacebookとTwitterから2021年2月1日から3月16日までの期間の81万2000件超の投稿を分析したところ、わずか12の個人と団体のアカウントがワクチンデマの65%を引き起こしていることが分かった。」とのことで一定の反ワクチン派が、SNSに多くのデマを流布しています。このことは6月24日の河野新型コロナウイルスワクチン接種担当大臣の「ワクチンデマについて」というブログで詳しく書かれています。
ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防するHPVワクチンがあります。日本では反HPVワクチン報道があったため、厚生労働省は2013年からワクチン接種勧奨を中止していますが、世界的にはWHOがワクチン接種を推奨しており、オーストラリア、イギリス、スペインは80%、アメリカやドイツは40-50%の方が接種しています。日本は勧奨中止前は70%でしたが中止以降は1%を下回っています。日本産科婦人科学会は早期再開を訴え、日本小児科学会は接種を推奨するよう声明を出しています。子宮頸がんの95%以上はこのウイルスに起因しています。子宮頸がんで亡くなる方は増加傾向で2017年には年間2800人の方が亡くなっています。科学的な判断よりも報道、世論の影響が大きいことがよく分かります。
冒頭のワクチン接種と死亡というタイトルにおいても、因果関係不明という情報だけではワクチン接種に対する恐怖心を煽ってしまいます。集団免疫に至らず、逆に健康面の理由などでワクチン接種ができない方のリスクを高めてしまいます。ワクチン接種は任意ですが健康な方がより多く摂取することで社会としてのコロナ対策が実現すると思います。