2021年09月 デジタル庁

2021年09月 デジタル庁

 9月1日にデジタル庁が発足しました。民間採用200名を含む600名の組織がスタートしました。発足式では菅首相が挨拶で「行政サービスの電子化の遅れ、バラバラな国と自治体のシステム、マイナンバーカードの利便性の問題、など、長年、手が付けられず、先送りにされてきた課題が沢山あります。<中略>立場を超えた自由な発想で、スピード感をもちながら、行政のみならず、我が国全体を作り変えるくらいの気持ちで、知恵を絞っていただきたいと思います。誰もがデジタル化の恩恵を受けることができる、世界に遜色ないデジタル社会を実現する。」と話しました。菅政権主要10政策の一つ、デジタル改革の「改革の象徴」がデジタル庁になります。しかしながら、9月24日時点で「デジタル庁」に関してGoogleトレンドで調べても検索トレンドのデータが存在せず、ニュースの月間アクセスランキングを公表している東洋経済(上位30位)や毎日新聞(上位20位)でも「デジタル庁」の文字は見当たらず、関心が低いことがよく分かります。デジタル庁の政策には「デジタル社会に必要な共通機能の整備・普及」「国民目線のUI・UXの改善と国民向けサービスの実現」「国等の情報システムの統括・監理」といった政策があり、1つ目の政策に関してはマイナンバー制度、2番目の政策では子育てや介護など、行政手続のオンライン窓口であるマイナポータルや様々な手続(子育て、介護、引越し、死亡・相続、社会保険・税手続、法人設立、旅券申請、在留申請、入国手続等)のオンライン化・ワンストップ化があり我々に直接影響があります。これらの政策が実現できれば行政手続きが飛躍的に便利になるはずです。ただしその前提としてこれらのサービスを提供する仕組みの刷新があります。ガバメントクラウド・ガバメントソリューションサービスや地方公共団体の基幹業務等システムの統一・標準化といった政策です。政府は「地方自治体が使う17の基幹業務システム(住民基本台帳、選挙人名簿管理、固定資産税、個人住民税、法人住民税など)について、2025年度末までにガバメントクラウドへの移行を目指している。」としており、これまで各自治体が個別に所有していたハードウエアやソフトウエアを所有しなくて済むことになるそうです。地方自治体の主要業務は基本的には同一なはずですが独自の制度やサービスもありますので標準化は容易ではありません。平井大臣も発足式でミッションについて「存在理由は、誰一人取り残さない人に優しいデジタル化。」と言及していますので新しい仕組みによって既存の個別対応以上の価値を生み出すことを期待しています。
 バルト3国の一つエストニアは電子国家として有名なですがマイナンバーカードに相当するe-IDカードが98%普及していて99%の行政手続きがオンラインで申請可能となっています。一般社団法人行政情報システム研究所の記事によりますと60歳以上の高齢者の84%が電子政府サービスを利用しています。高齢者におけるサービス別利用率はオンラインバンキング92%、電子署名80%、電子確定申告74%、電子投票70%、eヘルス70%、電子処方箋67%と行政手続きのみならず多くの場面で利用されています。エストニアは132万人と小さい国で1991年に独立を果たしデジタル化政策を推進してきたのでこのような電子国家が実現できたのだと思います。デジタル庁が掲げている取り組みは最初の一歩ということになります。私もマイナンバーカードを使ってコンビニエンスストアでの証明書発行サービスなどを活用して以前よりも利便性を感じる場面がありますが、まだ、改善、拡大の余地があると感じています。「デジタル庁」によって「人に優しいデジタル化。」となるよう期待しています。