大量の外国産輸入アサリが「熊本県産」と偽装された問題をうけ、偽装アサリを根絶するため蒲島郁夫知事が2ヶ月の「緊急出荷停止宣言」を要請する事態となりました。西日本新聞によりますとアサリを出荷する問屋、養殖する組合、組合から漁場代を受け取る漁協が互いに依存し、「食っていくため」と言い、何十年も偽装を続けてきたそうです。輸入アサリを熊本県産と偽る大規模な産地偽装疑惑は、県産アサリの漁獲量と販売量の大きな差を農林水産省が疑問視したのがきっかけです。農水省の小売店実態調査によりますと21年の10月~12月の3ヶ月間に全国で販売された「熊本県産」表示のアサリは2,485トン、1年間の推定漁獲量35トンの70倍となり、大きな乖離があります。この数字が見過ごされてきたのは食品表示基準の「長いところルール」が原因の一つだと言われています。
これは、輸入アサリであっても原産地よりも養殖の期間が長ければ養殖地(熊本県)を原産表示できるしくみです。この基準はJAS法で決められていて生鮮食品、加工食品のすべての製造業者に義務付けられています。
最近、1967年創業の奈良のうなぎ店「うな源」が破産申請することになりました。不適格表示の匿名情報をもとに近畿農政局が立入検査をし不正表示が発覚し、近畿農政局が1月末、2020年に中国産ウナギを使ったうな重など約15万8千個のラベルに国産と表示して販売していたとして、同社に食品表示法に基づく是正措置を求めていました。これにより信頼が失墜し今回の事態となりました。うなぎに関しては2006年愛知県一色うなぎ漁協が生産履歴のはっきりしない台湾からの輸入ウナギを「一色産」と表示して出荷したことが発覚し問題になりました。これは日本でとれた稚魚を経費が安い台湾で育て、逆輸入する、いわゆる「里帰りうなぎ」を国産と表示していた問題です。この問題をうけて「日本鰻輸入組合」はJAS法の解釈、如何を問わずすべて輸入鰻として販売することを決定しています。このことから「うな源」のケースは稀なケースと言えると思います。
偽装対策と言えば牛の10桁の個体識別番号が有名です。2001年に日本でBSE感染牛が発生し、牛肉の安全性に対する不安が高まっていたなか、2002年に雪印食品が外国産の牛肉を国産と偽装し農水省の補助金を騙し取った事件が決定打となり個体識別番号の導入に至ったと言われています。雪印食品はBSE発生以前から虚偽表示をしていて最終的には廃業となってしまいました。
豚も牛同様個体識別の管理が比較的容易な家畜のように見えます。JPPAが国産豚肉の農場トレーサビリティシステムを提供しています。豚の飼育戸数は3,850戸ありますが、実際にこのトレーサビリティシステムに参加している農場は1,188農場に留まっています。トレーサビリティシステムは消費者にとっては大きなメリットがありますが、コスト、手間などがかかるため生産者から自発的に普及させるのは難しく、鰻、牛肉のような大きな問題がないと大きく変わることが期待できません。
従来は手間やコストが掛かるようなことでもITの活用により、これまで以上に透明化できることが増えています。今後一層透明化が進んだときに、お客様や社会に安心してもらえるような仕事にしていきたいと思います。