セイロンティーで有名な国、スリランカが7月5日に破産し、ラジャパクサ大統領は国外脱出を図り、滞在先のシンガポールで大統領を辞任する事態となりました。
NHKによると、「対外債務の残高は2021年末の時点で507億ドル(日本円でおよそ7兆円)に膨らんでいて、新型コロナウイルスの影響による観光客の激減なども重なり、深刻な外貨不足に陥りました。原油価格が高騰する中、外貨不足で輸入が滞り、ガソリンなどの燃料費も高騰。食品や医薬品などの生活必需品の輸入も滞るようになっていた。」とのことです。このような状況下での出来事です。
「根本的な原因は財政運営や農業政策の失敗、それに汚職。」とのことです。
2021年5月、ラジャパクサ大統領は化学肥料、農薬、除草剤の輸入を禁止し、有機農業を推進しました。しかし、急な移行のため有機肥料の生産も追いつかず、米の生産は2019年に比べ43%も低下し、主要な輸出物である茶やゴム、ココナッツなどの収穫量も大幅に減少してしまいました。このため2021年11月にはこれらの主要輸出物について化学肥料の使用を部分的に認め、2022年2月には主要輸出物について有機農業への移行を停止しました。このような背景として過度な環境配慮にあると可能性を指摘されています。
中国でも1959年から数年間大凶作があり、数千万人が亡くなる飢饉となりました。これは旱魃などの自然災害に加え大躍進政策などの政策にも原因がありました。当時ソ連の農学者のルイセンコは科学的根拠のない疑似科学に基づく農法を提唱・推奨し、ソ連国内で広めていました。中国でもこれに習い苗を高い密度で植える「密植」や、通常15〜20cmのところ3倍以上耕す「深耕」など従来の農法や科学的根拠に拠らない農法をすすめました。他にもルイセンコに倣い化学肥料を排除するなどした結果、大飢饉につながってしまいました。
科学的であるための要素の一つとして再現性があります。2014年に起こった理化学研究所のSTAP細胞問題がありました。科学雑誌ネイチャーに掲載されたSTAP細胞の論文に不備や不正疑惑が指摘された問題です。その後理化学研究所の当事者を含む複数チームで再現実験を行いましたがSTAP減少を再現できず、関係者を処分する結果に至りました。
ネイチャーは、研究における再現性について、2016年に研究者に対しアンケート調査を実施しました。「再現性の危機はありますか?」という質問には、回答者の52パーセントが「はい、深刻な危機があります」と答え、「はい、わずかな危機があります」と答えた者は38パーセント、「いいえ、危機はありません」と回答した者はわずか3パーセントであったそうです。
一般的には良いことと認識されていても、程度が過ぎると破綻をきたします。また、疑似科学と言われる権威によるもっともらしい説も少なくありません。判断が必要なときにはバランスよく、再現性のある選択肢を選んでいきたいと思います。