ここ数年11月になるとあちらこちらで「ブラックフライデー」をよく耳にします。いつの間にか身近になっている気がします。アメリカでは11月の第4木曜日「感謝祭(Thanksgiving Day)」で祝日となり、翌日も休みにすることが多く、この金曜日に大々的なセールを実施していました。1961年フィラデルフィアでは週末のフットボールの試合と重なり、街中大勢の観光客や買い物客が殺到しました。このため渋滞や万引きなど混乱を招き、警察はこの日一日中働き詰めで休むことができなかったことから「ブラックフライデー」と呼ばれるようになったようです。現在は黒字になるからという説もあります。「ブラックフライデー」に夜中から列をなして開店と同時に売り場に殺到します。2008年にはウォルマートの入り口で押し寄せる客により34歳の男性が圧死したり、トイザらスでも発砲事件により2名死亡するなどかなり殺気立ったイベントだと言うことがわかります。最近はセール期間の長期化、開店時間の前倒し、オンラインショッピングの普及などで実店舗での混乱も少なくなりました。この傾向はコロナの影響で加速しているようです。
日本では2016年当時の石原伸晃経済財政・再生大臣が働きかけてはじまりました。ちょうどこの頃プレミアムフライデーも導入されましたがこちらは沈静化しています。2016年はイオンをはじめトイザらス、GAP、貝印などいくつかの会社がブラックフライデーを実施しました。2016年は11月25日~27日の3日間の実施でした。最近では前倒し、長期化が進み今年イオンでは11月18日から27日の10日間にわたって実施されます。同じ時期に「サイバーマンデー」があります。これはダイヤルアップなど家庭の通信速度が遅い頃に「感謝祭」明けに職場の高速回線を利用しオンラインショッピングすることから始まったと言われています。
「経済学の父」と呼ばれるアダム・スミスは資本主義経済の人間像を経済人(ホモ・エコノミクス)を「もっぱら〝経済的合理性〟にのみ基づいて、かつ個人主義的に行動する(するだろう)」と想定していました。しかし2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カネーマンらはプロスペクト理論で、損得が定量化できる状況下でも必ずしも合理的な判断ができるわけではないと説明しています。例えば「投資家は収益よりも損失の方に敏感に反応するので、収益が出ている場合は損失回避的な利益確定に走りやすい。一方、損失が出ている場合はそれを取り戻そうとしてより大きなリスクを取るような投資判断を行いやすいとされる。」といったことがあります。この様に行動経済学には様々な合理的とはいえない心理的な理論がいくつもあります。購買行動においても同様に合理的な判断は容易ではありません。例えば絶対的ではなく想定的に評価してしまうフレーミング効果があります。例えばコンビニの「100円均一セール」というキャッチコピー。これはセブンイレブンが展開し、瞬く間に各コンビニが使い始めたコピーです。
小売業では「2割引き」「20%OFF」と表示することが一般的でした。「100円均一」と表示することで購買意欲を上げることに成功しています。500円のお弁当と700円のお弁当を売っている弁当屋では、500円のお弁当のほうが売れ行きが良いそうです。しかし、1ランク上の1,000円のお弁当を出したところ、700円のお弁当が一番売れるようになったそうです。バーゲンセールの際にはこれら以外にも購買意欲を上げるようないくつもの手法を巧みに利用することで、合理的な判断ができなくなるようです。冷静になって不要な支出を控えたいと思います。