社長 渡辺直企
明けましておめでとうございます。
昨年はコロナ禍が続く中、2月にロシアのウクライナ侵攻が始まり、すでにコロナ禍で混乱していた世界経済に大きな影響が出ています。ロシアだけでなく中国も不安定な状態が続いており、先が読めず予断を許さない状況が続くと思います。当社を取り巻く環境は課題が多く、留まることは許されません。4月には50周年を迎えます。大きな節目の時期にもう一度、成長、進化を続けられるように今年の指針を「守破理」としました。 「理」が「離」の「守破離」は剣道や茶道などで、修業における段階を示したものとしてよく知られています。『「守」は師匠の教えに従い、流儀、基本の形を守る段階。「破」は流儀を極めたあと、工夫して良いと思ったものを取り入れ、発展させる段階。「離」は流儀から離れ独自の新しいものを生み出し確立させる段階。』となります。「守破離」は千利休に関する言葉として有名です。千利休の茶道における修行観を江戸千家を創設した茶人 川上不白が「守破離」として広めたそうです。
「守破理」は仕事に対する考え方です。「守」は仕事の「型」です。お客様の要求、技術など仕事を取り巻く環境は日々変化しています。これらに対応するために、新しい技術の導入、無駄、問題点の改善などを実施します。これらが「破」となります。仕事が続いていくと「破」が積み重なります。「破」に「破」を重ねていくうちに、既に意味のない無駄な仕事が増えたり、複雑化し生産性、品質に潜在的な問題を抱えていくことになります。増築に増築を重ねた老舗旅館のようになってしまいます。また「破」の対応は往々にして特定の人が対応したり、時には強いリーダーシップや高い能力に頼る必要があります。この結果、属人化、ブラックボックス化も進んでしまいます。頑張っているのに時間が無い、特定の人に集中するという事態も生んでしまいます。そこで、「理」が必要になります。「理」は「守」と「破」を見直し、新しい「型」にしていくための論理的な構造です。「理」を通じ新しい「型」とすることで多くの人が、より早く、正確に仕事を共有できるようになります。「理」は文字で論理を表現することになります。
我々が普段会話で使う言語は7万~3万年前に新しい思考と意思疎通の方法の登場、つまり「認知革命」において飛躍的に向上し、その後の人類の文化的進化に大きく寄与しました。最初の文字は紀元前3200年ごろシュメール人が使い始めたそうです。 我々が使う漢字は紀元前1300年頃の中国(殷王朝)によって発明された甲骨文字が最初になります。その後4世紀末から5世紀はじめに日本で使用されるようになりました。世界には6,900ぐらいの言語があるといわれていますが、現在世界で使われている文字(現用文字)は30~40種くらいだと言われています。これらは大きく分けてアルファベット系、漢字系など、たった4つの文字に起源をもちます。文字の発明が如何に貴重であったかがわかります。古代ギリシアで誕生した人間を自由に開放する知識であるリベラルアーツには言語系、数学系があり、言語系には文法、論理、修辞が含まれていました。話し言葉に代表される言語は修辞(弁論、雄弁)など訴えかける力はありますが、曖昧さを多く含みます。仕事を言語化するためには論理的に整理し形式知として言語化した「理」が必要になります。より多くの「理」により新しい「型」、つまり「守」を生み出し組織の中に浸透させることで仕事の知識を広く深く共有することが可能となります。その結果、組織的に安定的に生産性、品質を高くすることが可能になり、お客様にも安心してより良いサービスを提供し続けることが可能になります。
顕在的な問題がなければ見直せなかった仕事に少しでも多く目を向けて、「理」を創って行くことで50年の歴史を礎に、持続的に成長できる仕事を創っていきたいと思います。