先日株式会社コンセントは消費者をだますウェブサイトやアプリのユーザーインターフェースについて、全国の18歳から69歳までのECサイトやアプリでの購入経験者799人を対象に、見たりひっかかったりした経験やその際に取った行動、認知・理解度などの実態を調査し、「ダークパターンレポート2023」としてとりまとめました。OECDが公表した「Dark Commercial Patterns, OECD Digital Economy Papers, No.336 © OECD 2022」を消費者庁が翻訳(仮訳)しています。これによると『「ダーク(・コマーシャル)・パターン」とは、通常オンライン・ユーザー・インターフェースに見られ、消費者バイアスを悪用することなどにより消費者の最善の利益とはならない可能性のある選択を消費者に
行わせる多種多様な行為である。ダークパターンは概して、消費者に望ましい範囲を超えて金銭を支出させ、個人情報を開示させ、又は注意時間を費やさせることを目的としている。』とあります。株式会社コンセントのレポートでは回答者の約7割はダークパターンを見たことがあり、4割強がダークパターンにひっかかったことがあると回答しています。レポートでは『ダークパターンそのものを知らないとダークパターンであることが認識できないことから、「ひっかかったことはない」と回答した人の中には、そもそもダークパターンであることに気づいていない人が一定数いると考えられる。そのため、実際には結果数値以上の人がダークパターンにひっかかっていることが想定される。』とあるように無自覚の人も相当数いると思います。
ダークパターンにはいくつかのパターンがあります。登録など強制する「行為の強制」、見た目で心理的バイアスを利用し誘導する「インターフェース干渉」、事業者に都合のよい行為を行うよう「執拗に(要請を)繰り返し」、アカウントもしくは消費者情報の削除を困難にさせる「妨害」、消費者の決定に関わる情報を隠し、デフォルトバイアス、アンカリングなどの認知を利用する「こっそり」、お客様の声などをつかう「社会的証明」、時間的・量的な制限を課し希少性に対する圧力をかける「緊急性」などがあります。「ダークパターンに騙されないために必要なこと」というアンケートでは、1位「自衛」76.3%、2位「国の取り締まり強化」71.8%、3位「ECサイトなどの企業側の対応強化」71.0%となっています。前述OECDのレポートでは、『2020年GooglePlayストアの240のアプリを調査したところ95%が一つ以上のダークパターンを備えており、49%は7つ以上のダークパターンを含んでいる』としていて、ダークパターンが蔓延していることがわかります。
Amazonのプライムサービスのキャンセルを困難にさせるために9回もクリックを強制するダークパターンを利用したとして2021年にノルウェーで訴訟がありました。2022年に話合いの後、EU及び欧州経済領域内の消費者に分かりやすく、かつ目立つ「キャンセルボタン」による2クリックのみで登録解除を可能にすることにより、同社のキャンセル慣行をEU消費者法に適合させることを確約しています。OECDのレポートでは『このように多くの消費者保護・データ保護当局が執行措置を執っており、消費者団体はダークパターンの使用に関して訴訟を提起している。しかし、今日までの執行事例は、規制者が一般的に認識している、限定されたダークパターンに関するものがほとんどである。』と現状では限界があると言っています。更に『市場原理のみをもってダークパターンに満足に対処できる見込みは低く、また、市場原理は、ダークパターンの使用を更に奨励することがある。』とまとめています。これらから前述のダークパターンへの対策の中で現時点で有効な手段は「自衛」ということが理解できます。ECサイトやアプリはパーソナライズ化、互いに連携するなどしてますます利便性が向上していきます。ダークパターンが潜んでいることを常に意識して活用することで便利な環境づくりが可能だと考えています。