2025年04月 トランプ関税

2025年04月 トランプ関税

 アメリカのトランプ大統領は4月2日ホワイトハウスで演説し「相互関税」として日本に24%の関税を課すことを発表しました。4月9日発動した直後、日本を含む報復措置を取らない国に対しては90日間、「相互関税」を停止すると発表しています。日本からは赤澤経済再生担当大臣が関税交渉のため渡米するなど先行きが不透明な状況が続いています。赤澤大臣との交渉にトランプ大統領が急遽出席するなど、トランプ大統領のディールに振り回されています。トランプ大統領は「相互関税」の根拠として「非関税障壁など含めると、46%の関税に相当する」と主張しています。この46%は2024年の日本からアメリカへの輸出額は1482億ドルで、日本にとって684億ドルの貿易黒字を元に684/1482=46%と算出したようです。この数字から「これはアメリカの親切心だ」ということで約半分の24%としたとのことです。財務省幹部から「あんないい加減な計算式は初めて見た」という声も上がっているようです。
 確かにかなり乱暴な計算である印象を受けます。しかし684億ドルの貿易赤字は46%の関税をかけられていることに近い、と言い換えることは可能だと思います。ただこの関税を課したとしても、その分貿易赤字が減るとは言えません。第一次トランプ政権でアメリカが中国に対して産業機器や半導体などに25%追加関税を課しましたが、この間ドル円は安定していた一方で、人民元が対ドルで最大15%下落しています。このような事実から安易な関税にはリスクがあることを既に経験しているので、トランプ大統領としてもむやみに「相互関税」を課すような可能性は少ないと思います。交渉の基本テクニックの一つにアンカリングがあります。これは値引き交渉をするときに、最初の言い値をより安く言ったほうが逆の場合に比較して最終的な妥協額が安くなる傾向があることをいいます。心理学的に明らかなテクニックなのは理解できますが、日頃互いの信頼を基本として交渉している感覚からは随分と乱暴な様に感じます。
 また、トランプ大統領は日本が米(こめ)に対して700%の関税を課していると非難していますが、これは農水省が過去WTOの交渉で使った数字です。特定の条件下で「778%相当」となると説明した数字が使われたようです。日本は年間77万トンの米を無課税で輸入しています。これを超える場合1kgにつき341円の重量税を課しています。2005年の当時の国際相場(44円弱/kg)で計算して778%という数字になったようです。
 46%の関税に相当するから24%の「相互関税」は非常に乱暴な理屈です。46%の算出はかなり荒いモデル化ですが実態を理解するためには役に立ちます。逆に米の700%関税は限定的な条件下なので事実ではありますがミスリードに繋がりかねません。事実であっても汎用的でない数字を出すことは長い目で見る
と、むしろ不利に扱われることがあります。
 日頃の仕事においても、適宜モデル化し数値にすることで状況を理解・共有・改善することが可能となります。これからも数値を適切に扱うことでより良い運営をしていきたいと考えています。