2010年02月 信頼の継続/叱られる

2010年02月 信頼の継続/叱られる

 トヨタはリコール問題など、現在いろいろたたかれて非常に厳しい状況にありますが、試練を乗り越え、再び世界的に実力を認められることになると思います。それは私自身もこれまでトヨタの製品に触れてきましたし、トヨタのものづくりに対する取り組みが真摯に行われていることもよく知られているからです。短期的にはかなり厳しい状況に陥ると思いますが、これらを糧にしてより良い製品を出していって欲しいと考えています。
 リコール隠しや虚偽報告、社会的な背任行為などは後を絶ちません。特に景気が悪化すると増加するようですが、組織的な隠蔽や逮捕者が明らかになると企業の信頼も失墜し、最悪の場合は事業の継続が不可能になることもあります。
 企業が継続し、拡大するためにはお客様の信頼を得ることが一番大事です。お客様の信頼を得られて初めて企業を継続する意義があると思います。起業時にはお客様に大いに評価されていて、信頼を得るための努力も惜しんでいなかったはずです。しかし、いつの間にか、組織の論理へと重心が傾いてしまい、要求・変化に対応できなくなっているのだと思います。結果として問題が発生しても本質に目を向けることができず、組織的な隠蔽に走ってしまいます。中にはたまたま巡り合わせが良いとか、景気の影響で事業を継続している企業もありますが、継続する間には様々な変化があり、状況が変わったときに荒波に耐えられなくなり崩壊していくのが世の中の常です。
 私たちが携わっている仕事はすべて社会の重要な役割を担っています。仕事に対する要求は常に変化します。社会やお客様の些細な変化を見逃さずに常に進化していかなければなりません。言われたことだけをこなして責任を果たした気持ちになることもあるかも知れませんが、変化に対応できる実力を身につけるために、要求以上の結果を常に追求する必要があります。この仕事が誰のために、どんな役にたって、どういう意味があるのかを理解しなければなりません。携わる仕事の意義が理解できて初めて、変化に目を向けて進化を遂げることができると思います
 今回のオリンピックではスノーボードの国母選手がゲレンデの外で注目を浴びました。JOCの公式ユニフォームを着崩し、謝罪会見の対応も非常に不誠実で、辞退を申し入れる事態になりました。
 色々な経緯、状況があると思いますが、私は国母選手自体の問題としてよりも、彼を取り巻く環境に大きな原因があると考えました。オリンピックの代表として選ばれること、公式の制服を身につけること。こういった意義を周りの大人たちが指導できなかったことが大きな原因だと思っています。大人だから、結果を出せば良い。周囲は競技の結果だけを期待するばかりで気を遣ってしまっていたのかも知れません。しかし、これまでの推移で周知の通り、彼にとって非常に大きな試練となってしまいました。その後の報道を見る限り才能も有り素直な性格の青年だけに非常に残念です。
 大人だから、すべての責任を負って自分で判断しなければならないと切り捨てるのは簡単です。どんな人でも時には誤った選択をするかも知れません。あえて彼の失敗をあげると、自分を叱ってくれる人が周囲にいなかったことだと思います。