先日佐賀県で救急車にiPadを配備し、搬送先医療機関を検索できるシステムを導入して搬送時間を短縮した事例をテレビで紹介していました。搬送時間の全国平均は39.3分で、10年前から10分も伸びていて、問題になっています。
このシステムを導入したのは円城寺雄介さんという佐賀県の情報・業務改革課職員です。彼は配属後この問題解決に取り組みました。徹底した現場主義を実践し、消防署、病院へ自ら足を運び、断られ続けた救急の現場も何度もお願いをして救急車に同乗し現場を目の当たりにしたそうです。救急車では救急隊員が患者の容体を判断し搬送先を電話で探すのですが、何度も断られていました。現場には病院の情報が全くありませんでした。
彼はこれらの課題を解決すべく、iPadとクラウドを組み合わせて搬送先検索システム「99さがネット」を構築しました。これにより見事搬送時間の短縮を実現しました。現在は多くの都道府県で導入や検討が行われています。
救急搬送時間については従来からの問題でしたが、なかなか打開策を打ち出せずにいます。我々の身の回りでは、かなり前からIT化が進んでいて、命を預かる一時を争う現場でなぜこんなに遅れているのかという疑問が湧きます。逼迫した現場ですので中途半端なIT化にはハードルが高かったのかもしれません。救急では自治体、消防、病院、医師会など様々な組織、機関が連携して蓄積したノウハウを元に運営しています。しかし、前述のように搬送時間は伸び続けていました。技術面の壁以外にも、組織や既得権益の壁などがあったのだと思います。99さがネットによって救急に協力的な病院が明らかになり、差別化が一層進むと思います。
これからも様々な分野で既存の壁をぶち破るようなシステムの導入は進んでいくと思います。99さがネットを導入しようとした他の県では佐賀県のようにはスムーズに導入が進まないケースもあるようです。推進、受け入れそれぞれの立場があり、システムの導入だけでは問題の解決はできません。個々の県それぞれ問題の原因は異なります。互いの理解と前向きな対応が必要です。導入を推進する立場であれば、様々な立場を理解し、共通の目的を明確にしたうえで説得、推進が必要です。また、導入される、システムを活用する側は、導入によって効率が上がり、様々な情報があからさまになります。守るべくは自分の立場ではなく受益者(患者)のメリットです。それまでに甘んじていた部分があるのであれば、改善、合理化が必要です。導入前以上に本来期待されている実力が試されることになります。