10月第2月曜日は体育の日です。また食欲の秋でもあり健康に関して見直すのに大変良いタイミングだと思います。厚生労働省が7月に発表した「簡易生年表」によりますと、2016年生まれは女性で49.9%、男性で25.6%が90歳まで生存するとのことです。非常に長寿社会になってきていますが、現役引退後は多くの人が年金や健康保険など社会保障に依存して生活をしています。しかし、社会保障費は年々増え続け、2015年度の年金や医療、介護などの社会保障給付費が前年度比2.4%増の114兆8千億円だったと国立社会保障・人口問題研究所が8月に発表しました。高齢化に伴い金額は過去最高を更新したとのことです。また、国の2018年度の予算の概算要求も100兆を超え、このうち社会保障費は3割も占めます。政府は2018年度の社会保障費が高齢化などによる自然増で今年度より6300億円多くなると見込んでいます。自然増は毎年度5000億円ほどに抑えるとの目安があり、年末の予算編成で少なくとも1300億円分の社会保障費を削減することになります。
2018年度予算編成に向けた社会保障改革のテーマとしては診療報酬、薬価改定、介護、障害福祉サービス等報酬改定、生活保護、生活困窮者自立支援制度の見直し、児童手当特例給付見直しなどがあります。また厚生労働省でも保険者努力支援制度(保険者インセンティブ)を定め、各健康保険組合に健診受診率の向上、メタボ該当者及び予備軍の減少、後発医薬品の促進、運動習慣の促進などの働きかけをしています。このような背景から、社会保障の負担を減らしていくことが我々にとってますます重要です。厚労省は「健康21」で指針を定め、健康寿命を伸ばすよう働きかけを行っています。健康寿命を伸ばす、つまり高齢者の障害を防ぐことを目的とした場合、それに関連するガン、脳卒中、心疾患、などの疾患をいかに減らすかが課題になります。これらの疾病は、多くの場合生活習慣に深く関連しており、高血圧や糖尿病、たばこ、肥満、運動習慣などが問題になります。このように健康を維持するために生活習慣を良くしていかなければいけないことは明白です。日常の運動が健康維持に効果があることが分かっていても忙しいなどの理由で中々実践できません。しかし、アイオワ州立大学の研究者グループの「ランニングと寿命の関係」に関する記事によると、週にランニングを1時間程度が適切で、ランニングを1時間するごとに寿命が7時間延びる可能性があるとのことですので、健康寿命を延ばす、寿命を延ばすという意味でも合理的に考えれば運動をするべきなのですが、なかなか実践できません。
今年のノーベル経済学賞は行動経済学者のリチャード・セイラーシカゴ大学教授が受賞しました。従来の経済学では人は合理的で、理性的であると前提し、理論を構築していましたが、セイラー教授は人が合理的ではなく感情に大きく影響されることを示しました。人の合理性は限定的で自制心も制御できないという訳です。上記のように合理的に考えて運動が実施すべきなのにできないのは当たりまえなのです。セイラー教授はこのような人の特徴を明確にすることで、「デフォルト」というアイデアを導入しました。これは、選択が必要なときに選択肢や条件を並べ合理的に選択させるのではなく、一番おすすめの選択を初期値つまり「デフォルト」を設定しておき、より良い選択肢へ導くというものです。臓器提供の意思宣言や、確定拠出年金の制度などで活用されています。
私もなるべく走るようにしていますが、目先のメリットだけではすぐ言い訳が出て、さぼりたくなってしまいます。良いことと合理的に考えたり、するべきと義務・強制で考えるのではなく、運動を生活の「デフォルト」に位置付けることで、当たり前に健康維持ができるようにしていきたいと考えています。