2019年11月 英語教育

2019年11月 英語教育

 10月24日テレビ番組で萩生田文科相は2020年度から始まる大学入試共通テストの英語民間試験の利用で不公平感について問われたところ「自分の身の丈に合わせて(略)頑張ってもらえれば」と発言し、これが教育機会の公平性を無視しているとして取り上げられ、その結果英語民間試験の導入は延期されました。
 英語民間試験の活用は文部科学省の「英語教育の在り方に関する有識者会議」で議論されてきました。せっかく英語を勉強してもコミュニケーションできないなどの問題があるため、これまでの「読む・書く」だけでなく「聞く・話す」を加えた4技能を小学校から教育し、大学入試でこの4技能を適切に評価することになりました。大学入試共通テストの英語試験に替えて既に4技能の評価を実施しているTOEFLなどの外部試験活用がきまりました。有識者会議の中でも費用などに関して議論されました。三木谷楽天会長は英検などでITを活用すれば一回当たり2,000円程度まで下がるはずとの意見を言っていました。現時点では既存のTOEFLなどの民間試験をそのまま活用するだけですので、費用、機会など不公平感が残る制度となっています。母国語(日本語)は幼いころから親を始め周りの人と話すことからはじめ、習得しています。英語を習得するために必要な学習時間は2,000時間と言われています。高校卒業まで学校で学習する時間は1,000時間未満です。限られた時間では特定の技能に注力せざるを得ません。戦後の日本は外国の制度・情報・技術を取り入れることで成長してきました。当然ながらこれまでは「読む・書く」などの能力が重要視されていました。
 限られた時間でどのような能力を身に着けていくかというのは非常に難しい課題です。流ちょうな英語をすらすらと話すのは非常に見栄えがします。当たり前ですが英語圏では幼児ですら流ちょうな英語を話します。私がアメリカで働いていたときは英語に苦労しました。専門は多少頑張っていましたが、英語はあまり勉強しませんでした。大人になって未熟な話しかできない恥ずかしさを克服することが一番大変でした。特に日常生活の会話は不特定の目的のない話題が多く苦手でした。ただ、自社の製品や業界の技術など特定の領域において、会議などは何とかこなすことができました。
 「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」では小学校から中・高等学校における英語教育の体制整備を計画していますが、この中で英語だけでなく日本人としてのアイデンティティに関する教育の充実として「東京でオリンピック・パラリンピックが開催される2020年を一つのターゲットとして、我が国の歴史、伝統文化、国語に関する教育を推進」とあります。
 インバウンド増加で英語を話す観光客が多くなりました。地元の観光業の経営者に「接客する皆さんは英語に苦労してるのではないですか?」と聞いたところ「暫らくすればなれるものです」と仰っていました。英会話も大事ですが中身がないと始まりません。コミュニケーションの必然性と中身が重要なのだと思います。
 今回の英語民間試験の導入の様に新しい取り組みを検討する際に特定の組織などに必要以上に肩入れすると、本来の目的から乖離し合理的な設計はできなくなってしまいます。非合理な政治判断が無くなることを願っています。