18歳以下の子供に10万円相当を給付することが11月26日の閣議で決定されました。12月6日に臨時国会が召集され、10万円給付を含む補正予算が議論されてきました。今回の給付は一律現金ではなく、所得制限や半額の5万円はクーポンとするなど話題になりました。自治体によっては所得制限を撤廃したり、全額を現金給付するなど対応が異なっています。所得制限は現在の児童手当制度を適用しているため、両親のうち所得の高い方の所得を基準としているので、一人のみ年収970万円の世帯は給付を受けられず、両親の年収がともに950万円の場合は世帯年収は1900万円になりますが、給付を受けられることになってしまいます。今回の一次的な給付だけではなく児童手当に関しても同様の対応になっており累積的な影響は少なくありません、臨時国会だけではなく継続的な議論を期待します。児童手当は1972年に児童手当法が制定されてから所得制限を設定し支給されています。2010年には一度所得制限を廃止しましたが、2012年以降現在の制限となっています。当時の報道では子育て世帯の9割を根拠に所得制限を設定しています。内閣府男女共同参画局の男女共同参画白書・令和3年版によりますと、1980年には共働き世帯は614万世帯と全体の35.5%でしたが、年々増え続け、1997年以降は共働き世帯が逆転し、2020年には1240万世帯と68%を占めるようになりました。制限の根拠や共働き世帯の動向などを考えて見ても違和感がある制度のように感じます。
ある値を境に条件が変わる例として所得税の「年収103万円の壁」「年収150万円の壁」、社会保険料の「年収106万の壁」「年収130万円の壁」があります。「年収130万円の壁」に関しては、年収130万円を超えてしまうと、国民年金保険料や健康保険料の負担が増えるので、収入の逆転現象が起こることが知られています。従来の事務処理環境ならやむを得ない制度なのかもしれませんが、今はIT技術が進歩しているので多くの情報を活用することで、技術的にはもっと自然な制度設計が出来るはずです。
電子政府として有名なエストニアでは99%の行政サービスが電子化されており、オンラインで完結できない手続きは結婚、離婚のみと言われています。X-ROADというプラットフォームで銀行の口座情報、国税庁の申告データ、内務省の住民登録データ、社会省の医療データ、電力会社の電気使用データといった、分散された無数のデータを連携させることができます。多くのデータが連携されているため確定申告は3分程度で済ますことができます。日本にもe-Taxというオンラインで手続き出来る仕組みがありますが、都度データを入力しなければいけないので多くの手間がかかります。
税務署が把握している税の捕捉率に関してクロヨン(9-6-4)、トーゴーサンピン(10-5-3-1)ということがあります。捕捉率の業種格差を表しています。給与所得者は9割または10割捕捉されています。捕捉率が低い業種もあり、現状の税制では不公平感が拭えません。政府は様々な政策でより良い社会づくりを心がけていると思います。現時点ではデータが有効活用されているとは思えません。基本となるデータのプラットフォームを整備した上でデジタル化を推進し、より透明性のある政策を実現するよう期待しています。