2022年05月 誤送金問題

2022年05月 誤送金問題

 山口県阿武町が新型コロナの給付金4630万円を誤って24歳男性に振り込み、返還を拒まれた問題が発生しました。誤送金にいたる過程で、町役場から銀行に依頼データの入ったフロッピーディスク(FD)を渡したことが報じられると、「フロッピーディスク」がTwitterトレンド入りしました。最後までFD製造を続けたソニーでも2011年3月に生産を終了しているので、現在流通しているのはほとんどが10年以上前に製造された未使用在庫品とのことです。私の原体験が5インチのFDでしたので、3.5インチのFDは比較的新しいモノの範疇として認識していました。さすがにこの20年位は使った記憶がありません。FDを見たことのない人も多いようです。Windowsは通常ドライブを「C:」から割り当てていますが、今のWindowsPCの祖先である1981年に発売されたIBM PCにはFDドライブが2つ用意されていて、OSが「A:」ドライブ、アプリケーションが「B:」ドライブとして使われた名残です。
 阿武町の副町長は「どうやらCD-ROMなどより処理が早くて、使い勝手がいいようなのです。」と言っています。町によると、担当職員は作業に不慣れだったうえ、他の職員によるチェックもなかったという。事案に対応する出納室は職員が2人だけで、町は、1人が二つ三つの仕事を掛け持ちしている状況だと説明しています。また、阿武町議会の上村萌那議員は、「阿武町は『平成の大合併』で市との合併を避け、単独政権の道を選んだ。キャンプ場を作るなど独自のまちづくりをするとともに、節約できる部分として人員の削減をしていった。阿武町の職員たちは1人で多くの仕事量を抱え、マンパワーが不足していた中で起こってしまった事故だと思う」と話しています。
 マンパワーの不足は事実だと思いますが、尚更のこと仕事を見直したり、オンラインバンキングなど効率の良いツールを活用することで、仕事の効率向上や品質を維持する工夫をするべきだと思います。一旦仕事の流れを作ってしまうと見直したり、変えていくことは容易ではありません。効率化と言いながら単なる手抜きで対応するケースを目にすることがあります。環境が多少変化してもすぐに問題が表面化することは少ないですが、徐々に余裕がなくなり、最終的には今回のような問題につながってしまいます。阿武町の人口は2005年の4101人から2020年の3055人と15年で3/4まで減少しています。2010年と2020年を比較すると町役場の職員は47人から53人と微増。歳入のうち地方税は2010年の3.1億から2020年の2.6億と16%減少する一方、歳出は31.4億から34億と増加しており、国からの補助金である国庫支出金が3.6億から7.5億と増加しています。
 総務省は地方公共団体の主要財政力指標(1)を毎年公表しています。令和2年度の阿武町の財政力指標は0.17と山口県19市町の中で一番低く全国1741市町村中1580位ですが、職員の給与水準を示すラスパイレス指数(2)は96.8と全国1055位となっており、財政再建計画中の夕張市の0.21、89.6に比べると厳しい財政状況のまま改革が進んでいない様子が伺えます。財政、人口減などで苦しむ阿武町の移住支援制度で移住した人に誤送金してしまい、オンライン決済代行業者3社にドルやユーロ建てで29回も振り込んだ一連の流れは多くの側面を含んでいます。今回の問題を教訓に日々の変革を続けていきたいと思います。