7月9日に鳩山元首相が「近々NATO首脳会議が開かれるが、ゼレンスキー大統領はNATO軍にロシアに対して核攻撃をして欲しいと要請している。」というツイートをしましたが、誤情報をもとにしたツイートであると指摘されました。その後、誤りを認め謝罪する事態になりました。これはツイッターが7月6日に日本で本格的に提供を開始した「コミュニティノート」という機能によるものです。ツイッターには従来から「警告ラベル」という機能があり、真偽に議論の余地がある内容や誤解を招く恐れがある情報を含むツイートに対して、追加のコンテクストや情報を表示する新たなラベルと警告メッセージを表示する機能を実装しています。対象のツイートを「誤解を招く情報」、「主張・見解が対立している議論」、「結論が出ておらず議論が継続している」の3つのコンテクストに応じて分類し、ツイートにラベルなどを付与するものとなっているそうです。過去には中国外務省の趙立堅報道官が新型コロナウイルスの感染について「武漢に流行を持ち込んだのは米軍かもしれない」としたツイートに「事実誤認」の警告ラベルを付与しました。2020年の米大統領選挙の投票日と翌日のトランプ前大統領のツイートの半分に警告ラベルがつけられていたそうです。「警告ラベル」はツイッター社の信用・安全部門の従業員がツイートをチェックし判断しています。フェイスブックやグーグルは新型ウイルスの際には真偽を確認するために外部の独立機関と提携していたそうです。
「コミュニティノート」はユーザ同士で評価し合ってファクトチェックを行います。ルールに違反していないかぎりTwitter運営チームが介入することは無いとのことです。コミュニティノートはオープンソースとなっていて、信頼度を決定するアルゴリズム(プログラム)はGitHubに公開されています。オープンで非中央集権的な考え方はビットコインで使われているブロックチェーンの考え方に近く、興味深い取り組みだと思います。
総務省は7月4日に「令和5年版情報通信白書」を公表しました。この中に「SNS等では自分に近い意見が表示されやすいことの認識(国際比較)」と「ファクトチェックの認知度」という調査結果があります。「SNS等では自分に近い意見や考え方が表示されやすい傾向にあることを知っている(「よく知っている」と「どちらかと言えば知っている」の合計)」と回答した割合は、欧米と比較すると極めて低い結果となっています。米国では77.6%、ドイツでは71.1%でしたが、日本は37.8%に過ぎません。また、ファクトチェック等の偽・誤情報に関連した取り組みの認知度(「内容や意味を具体的に知っている」「なんとなく内容や意味を知っている」の合計)28.6%とアメリカの81.9%、ドイツの58%と比較すると非常に低くなっています。
非中央集権的なビットコインでは51%攻撃といわれますが、特定の個人や団体が計算処理能力の51%以上を支配することによって、本来不正な取引が正当として承認されたり、正当な取引が拒否されることが起こり得るという問題があります。「コミュニティノート」も同様にユーザ間の評価に依存するので、より正確な仕組みであると信頼できるまでは時間がかかると思いますが、今後の進化に期待したいと思います。