2024年07月 東京都知事選挙

2024年07月 東京都知事選挙

 7月7日に実施された東京都知事選挙は現職の小池都知事が291万票(42.8%)を獲得し当選しました。SNSを駆使した前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏が165万票(24.3%)を集め、前参議院議員の蓮舫氏の128万票(18.8%)を上回りました。石丸氏の2位を予想できたメディアは期日前投票した2万人超を調査したNHKのみでした。日本テレビは無作為に作成した番号に電話をかける方法で1,283世帯のうち743人から回答を得て小池43%、蓮舫19%、石丸16%と分析していたとのことです。統計局に「調査実施と分析」というHPがありますが、どれだけ標本(サンプル)を取れば誤差をどのくらいに収められるか説明しています。都知事選で2位と3位の差は5.5%だったことをふまえ、ここの式を使って50%の回答率、標本誤差3%に抑えるとして、95%の信頼度で計算すると1,111のサンプルが必要となります。標本誤差を1%以下とする場合は10,000のサンプルが必要になります。今回の場合、地域、世代で支持層が異なり、電話に応える層などを考えるともっとサンプルを増やすか調査方法を変える必要があったのだと思います。
 今回の都知事選挙では59億2400万円の支出が見込まれ、都選挙管理委員会が把握する1979年以降で最高額になりそうだとのことです。これには1万4230か所の選挙ポスター掲示板の設置費、1,865か所の投票所と62か所の開票所の設営費、新聞広告や政見放送にかかる経費、投票用紙や選挙公報の印刷代――などがかかり、都知事選の業務に従事する区市町村選管職員の人件費も含まれるそうです。開票作業では毎分660票読み取り可能な投票用紙読取分類機が導入され効率化が進んでいます。投票に関しては紙に記入する代わりに「電磁的記録式投票機」で投票し、サーバーで集計する電子投票や、投票所にいかなくてもインターネット経由で投票できるインターネット投票が検討されています。電子投票は2002年の岡山県新見市長選挙で初めて実施されましたが各地で機器トラブルが発生したため普及に至っていません。
 上場企業の株主総会の議決権は2006年からインターネット投票が実施されています。株主が招集通知とともに送られてくる議決権行使書に印字されたIDとパスワードを用いて、議決権行使サイトにアクセスして議決権を行使するものです。三井信託銀行が集計したところ、総会前に議決権を行使した株主のうちインターネット経由が2022年に52%にのぼったそうです。
 つくば市は国家戦略特区「スーパーシティ」の枠組みを活かして2024年10月の市長選挙と市議会議員選挙で、全国初のネット投票の実用化を目指しているそうです。専用アプリ上で、送付された個人QRコードとマイナンバーカードなど複数の認証を用いてセキュリティを確保しているようです。
 国政選挙では世界で唯一エストニアが2007年からインターネット投票を実施しています。日本では2月15日に内閣官房デジタル行財政改革会議事務局の課題発掘対話として「在外インターネット投票」が議論されました。会議の中で在外邦人や若年層の投票率の向上に寄与する可能性があると提起されたそうです。
 投票方法が変わることで得票の傾向が変わり、エストニアではインターネット投票が導入された2007年以降、それまで第三党だった改革党が4回の国政選挙で全て第一党になったそうです。今回の都知事選は若年層に石丸氏の支持が多く10代・20代は43%と小池都知事の29%を大きく引き離していました。10代・20代の投票率は大体50%程度(約90万票)ですので、仮に残りの票を100%石丸氏が獲得しても当選には至らなかったという結果になりました。